ヒートポンプ給湯機による需要ピークを“カット”

 加えて、電力需要のピークカットにも活用する。新蛇田地区では、ヒートポンプ給湯機を導入したオール電化タイプの住宅が多く設置されるため、需要ピークは夜中になる。オール電化住宅の場合、時間帯別料金を適用され、ヒートポンプは、電気代の安い深夜に稼働して貯湯タンクにお湯を貯めておく、という運用パターンになる。

 そこで、太陽光が稼働する昼間に蓄電池を充電しておき、夜間に放電することで、ピーク時間帯に系統からの受電量を削減できる。原子力発電の稼働停止が続いている中、電力需要の平準化を促し、限界費用(燃料など変動費)の高い電源の運転時間を減らすことは発電コスト全体の抑制につながる。

 ヒートポンプ給湯機の運用パターンに関しては、太陽光の大量導入で昼間に余剰電量が発生して卸電力場の相場が下がった場合、昼に稼働してお湯を貯めておくという運転も今後の検討課題になっている。ただ、こうした運用には、ヒートポンプ給湯機の俊敏な稼働・停止や料金体系の見直しなど、まだ課題が残っている。

 ヒートポンプ給湯機と蓄電池を連携させ、太陽光の余剰電力を貯めてお湯を沸かすという運用は、現行の料金体系下での低炭素型の運用パターンになる可能性がある。

 また、将来的には、需要家統合システムと連携した運転方法にも取り組む(図11)。需要家のEMSの情報を分析することで、高い精度で電力需要を予測し、一方で、気象予測によって、太陽光の発電量を予測できれば、需給バランスを補う形で、蓄電池の充放電スケジュールを作成できる。

図11●石巻スマートコミュニティ推進事業の全体像(出所:東北電力)
図11●石巻スマートコミュニティ推進事業の全体像(出所:東北電力)
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 事前のスケジュール運転による需給バランス制御を実現できれば、系統電圧の安定化やピークカットなど、系統安定化システムの機能をより効果的に運用できる可能性もある。

 太陽光の大量導入に伴い、出力変動を緩和するための系統用蓄電池に注目が集まっている。ただ、系統内での最適な連系地点やそれに応じた運用手法など、試行錯誤の段階だ。石巻市の新蛇田地区のプロジェクトは、こうした課題に貴重なデータを提供しそうだ。