住宅蓄電池の「アグリ」で需給バランス

 蓄電池システムは、「エネルギー」「防災・減災」分野の実証で活用した。実証内容は大きく3つ(図3)(図4)。(1)30世帯のHEMSと連携し、家庭の消費電力がピークとなる夕方に蓄電池を放電して、需給バランスの改善効果を検証すること。(2)米子市役所(本庁舎、淀江支所)における電力需要のピークカット電源として運用し、電気代の削減効果を推定する。(3)米子市役所(本庁舎、淀江支所)の非常用電源としての効果を検証する。

図3●古河電気工業製の鉛蓄電池を採用
図3●古河電気工業製の鉛蓄電池を採用
(出所:日経BP)
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図4●蓄電池用の双方向型PCSは東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用
図4●蓄電池用の双方向型PCSは東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用
(出所:日経BP)
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 (1)は、米子市の地域新電力、ローカルエナジーが、将来的に住宅用蓄電池を活用したビジネスモデルを検討する際の基礎データにする目的がある。

 ローカルエナジーに50%を出資する中海テレビは、「放送」「通信」に加え、「環境エネルギー事業」を経営の柱に掲げており、住宅用太陽光発電の設置事業にも参入している。住宅太陽光は、今後、買取価格の低下に従って、売電主体から自家消費型に移行していく。その場合、家庭用蓄電池も併設して、自家消費量の拡大を目指す可能性が高い。

 今回の実証では、市庁舎に設置した大型蓄電池システムを、30軒の住宅に設置した小型蓄電池を集約(アグリゲーション)して制御したと見立てて、それによる需給バランスの改善効果をシミュレーションした。

 このように分散したエネルギー設備を統合的に制御して、電力系統全体での需給バランスを最適に制御する仕組みをVPP(バーチャル・パワープラント=仮想発電所)と呼ぶ。VPPの仕組みがどんな形でビジネスモデルとして確立するかは、太陽光の普及度合いや規制改革などによって、まだ見通せない面もあるが、再エネの大量導入時代に技術的なニーズが高まることが予想される。