住宅蓄電池は3kWhが適切

 特に、相対的に狭いサービス管内で需給バランスを維持する地域新電力にとって、需給バランスを改善してインバランスのリスクを下げる技術として、VPPへの期待は大きい。

 今回の実証プロジェクトでは、今後、普及が予想される家庭用蓄電池を使って、夕方の需要ピークに放電することで、需給バランスを改善する仕組みを、市庁舎に設置した大型蓄電池を使ってシミュレーションした。

 その結果、住宅用蓄電池で3kWh程度の容量があれば、新電力に求められる「30分同時同量」の達成をサポートし、インバランスコストを低減できることが分かった。シミュレーションでは、朝6時から夕方6時まで太陽光などで充電し、夕方6時から朝6時までに放電するパターンで充放電した。

 その結果、例えば、2014年1月14~20日に実施したシミュレーションでは、各家庭に必要な蓄電池の容量は、小さいもので2.05kWh、大きいもので2.99kWhになるという分析となった(図5)。こうした結果は、今後、ローカルエナジーなどが、VPP型のビジネスを模索する際、貴重なデータとなる。

図5●1世帯当たりの蓄電池充放電・必要容量シミュレーション
図5●1世帯当たりの蓄電池充放電・必要容量シミュレーション
(出所:米子市)
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 ローカルエナジーは、現在、200以上の公共施設と約1400カ所の低圧需要家向けに電力を販売しており、契約容量は16.7MWに達している。電源構成は、FIT電気を含め、県内にある電源が90%以上を占めている。約8割が廃棄物発電で、5~6%が太陽光となっている(図6)。電力事業のノウハウを蓄積するため、需給管理を外部化せず、5人の社員が日々、需給バランス業務を担当している。

図6●ローカルエナジーの電源構成
図6●ローカルエナジーの電源構成
(出所:ローカルエナジー)
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 現在、インバランスのコストは想定を下回っているものの、今後、太陽光発電の比率が向上したり、住宅の顧客が増えたりした場合、需給バランス維持の難易度が高まる。その際、家庭用蓄電池を活用したVPPモデルが効果を発揮する。