損害賠償の金額に2通りの考え方

 それでは、業者が損害賠償責任を負うとして、損害賠償の金額は、どのように考えるべきでしょうか。

 まず、一つの考え方として、隣家の日影が係ることにより太陽光発電システムとして十分に機能しなくなった太陽光発電システムの「設置費用相当額」を損害と考える考え方がありえます。

 この考え方は、太陽光発電システムの普及のために行った投資の元本回収の利益のみ保護するというものです。すなわち、被害者の最低限の利益を回復する一方、太陽光発電システムの法的保護はこの限度に限るべきであるという価値判断により、発電収益までは法的に保護しないと考えるわけです。

 この場合の損害の計算式は、以下のように考えられます(図3)。

図3●「設置費用相当額」を損害とする場合の計算式
図3●「設置費用相当額」を損害とする場合の計算式
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 これに対し、2つ目の考え方は、設置費用回収後の「将来の売電収益」も損害に含むとする考え方です。再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)のもと、法律上、売電をする経済的利益が法的に保護されている以上、太陽光発電システムにより発電をして収益を得る利益までを法的に保護するという考え方もありうるでしょう。

 この場合、太陽光発電システムからの売電により得られる経済的利益は将来のものですが、損害賠償金は現在支払われるため、この点について調整する必要があります。この調整については、「割引現在価値」の考え方を用いて、割引をすることが考えられます。

 以上を踏まえて損害の計算式は、以下のように考えられます(図4)。

図4●損害に「将来の売電収益」も含むとする場合の計算式
図4●損害に「将来の売電収益」も含むとする場合の計算式
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