京セラがハンファQセルズジャパン(東京都港区)に対して特許権侵害を主張して係争していた裁判が、2015年10月6日、和解により解決したとの報道がなされた。ところで、もし、この事件で、ハンファQセルズジャパンの特許権侵害が認められるような判決となったら、どうなっていたのであろうか。ここでは、太陽光パネルが、「物の発明」の特許を侵害している場合を念頭において、解説を行う。

特許権の効力は、発電事業者にもおよぶ

 特許権者は、特許発明を業として実施する権利を専有することができるものとされている(特許法68条)。ここでいう「実施」とは、物の発明については、「その物の生産、使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」をいうとされている(特許法2条3項1号)。

 そして、特許権が侵害されている場合には、特許権者は侵害の停止を請求することができる(特許法100条1項)。さらには、特許権を侵害した者は、過失があったものと推定され(特許法103条)、損害賠償責任を負担することになり、法律の定めにしたがって推定される損害等の賠償をしなければならない(特許法102条)。この過失の推定は、特許侵害品を購入して利用したものについても同様であると理解されている(東京地裁昭和59年10月31日判決)。

 以上を敷衍すると、太陽光パネルが特許権を侵害するものであったときには、ライセンスを受けることなしに、その太陽光パネルを生産、販売してはならないのはもちろん、業として利用することもできないものであり、太陽光発電事業者は権利者の要求があれば利用を停止しなければならない。さらに、太陽光パネルを利用する発電事業者は、たとえ特許権侵害の事実やその可能性を知らなくても、法律上、「過失の推定」がされるため、損害賠償責任を負わなければならない。

 仮に、太陽光パネルメーカーが特許侵害で敗訴していたとしても、太陽光発電事業者が、法的責任を追及する相手方に選択される場面はほとんどないと思われるが、理論上、上記の重大なリスクが否定出来ないことは注意が必要である。

 なお、「業として」使用していなければよいので、特許侵害が認められても、住宅用太陽光発電に利用していた者に生じるリスクは特に限定的であろう。