例外的に行使できる場合とは?

 もっとも、この原則の例外として、「請負代金全体に占める当該動産の価額の割合や請負契約における請負人の債務の内容等に照らして請負代金債権の全部又は一部を右動産の転売による代金債権と同視するに足りる特段の事情がある場合には、右部分の請負代金債権に対して右物上代位権を行使できると解するのが相当である」とし、例外的に物上代位権の行使が認められる場合を明らかにしました。

 その上で、「右事実関係の下においては、右の請負代金債権を相手方が破産会社に売り渡した右機械の転売による代金債権と同視するに足りる特段の事情があるということができ、申立外会社が仮差押命令の第三債務者として右1740万円の一部に相当する1575万円を供託したことによって破産会社が取得した供託金還付請求権が相手方の動産売買の先取特権に基づく物上代位権の行使の対象となるとした原審の判断は、正当として是認することができる」としました。

 最高裁決定は、大審院判例が示した原則論を踏襲しつつ、例外的に物上代位権の行使が認められる場合があることを明言した点で重要な意義があるといえます。

 この決定に従えば、本件の太陽光パネル販売業者は、原則として動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使できませんが、例外的に「請負代金全体に占める当該動産の価額の割合や請負契約における請負人の債務の内容等に照らして請負代金債権の全部又は一部を右動産の転売による代金債権と同視するに足りる特段の事情がある」と認められる場合には、物上代位権を行使できることとなります。

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