「物上代位」が認められる三つの担保物権

 そもそも「物上代位」とは何でしょうか。

 民法304条1項本文は「先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる」と規定しています。このように、先取特権、質権、抵当権といった担保物権に関しては、担保物権の目的物の交換価値が実現した場合に、その価値(転売代金債権や賃料請求権、保険金請求権)に対しても追求していけるようにしたのです(民法304条、350条、372条)。これを「物上代位権」と呼んでおり、民法典上は上記三つの法定担保物権にしか認められていない効力です。

 動産売買の先取特権に基づき請負代金債権に物上代位権を行使することができるかという点についてのリーディングケースとして、大審院大正2年7月5日判決があります。

 この判例は、建築工事の請負人に材木を供給した者の先取特権は請負人が注文者より受けるべき報酬金に対してはこれを行うことができないと判示しました。

 判決理由は、(1)民法第304条は、先取特権の効力の及ぶ範囲を拡張し、目的物の売却代金のように目的物の全部又は一部に代わる物の上にその効力を及ぼした法意の規定であるが、目的物の処分によって債務者が取得する金銭債権であっても単純に目的物の全部又は一部を直接代表しないものには先取特権の効力が及ばないと解するのが相当である。(2)本件請負代金は、建築工事の完成に要する一切の労務材料等に対する報酬を包含するものであって、単純に債権者が供給した材木のみを直接代表するものということはできないから、結局、材木の上に先取特権を有する債権者も、請負契約によって債務者が第三債務者から受けるべき報酬金に対しては先取特権を行使できないと解するのが相当である、というものでした。

 この判例に従うと、本件においても太陽光パネル販売業者は物上代位権を行使できないということになりそうです。

 しかしながら、判旨の表現からすると「目的物の全部又は一部を直接代表する」ということができる場合には、物上代位権を行使できる余地を残しているともいえそうです。