「低圧分割禁止」ルールで売電できず

 固定価格買取制度(FIT)によって太陽光発電事業を行う場合、電力会社との売電契約と経済産業省からの設備認定(改正FIT後は事業認定)、そして発電事業を行う土地の確保(賃借契約か売買契約)の3つが必要になります。

 通常、これら3つを並行して進めることになります。こうした事情から、「電力会社が売電契約の申込みを留保し、太陽光発電事業が出来ない場合、土地の売買契約を錯誤無効にできますか?」という質問を受けることがあります。

 今回は、実際にこの問題が争点となった判例(東京地方裁判所平成28年 6月30日判決)を解説することで、少しでも参考になればと思います。

 事案の概要は以下です。原告が宅地造成して分譲した土地を、被告が太陽光発電事業に使用するために5400万円で買う、との売買契約を締結し、売買契約当日に手付金400万円を支払いました。

 この売買契約の同日、被告は、K企画設計との間で、同社が有するFIT制度に基づく設備認定資格(発電所名:aソーラータウン、認定資格75件、総発電量:1125kW)を540万円で買い取る旨の契約を締結し、同日、K企画設計に手付金108万円を支払いました。

 K企画設計は、本件売買契約及び本件譲渡契約の締結に先立ち、被告に対し、「東京電力が本件土地の所在地では50kW未満の低圧発電設備を除いて系統連系受給契約の申込みを留保しており、50kW以上の高圧の発電設備を設置できない状況であるが、本件認定資格が75件と小口化されているため高圧設備と認定されることはなく、平成26年中にはこれを事業化できる」と、説明していました。

 そこで、被告は、本件認定資格に係る発電設備が高圧設備に該当せず売電に問題がないと考え、本件土地に太陽光発電設備を設置して東京電力に売電する事業を行うことを目的に本件売買契約を締結しました。

 しかし、東京電力は、本件設備を1つの高圧設備と認定して売電契約の申込みを留保し、被告が本件土地に太陽光発電設備を設置しても、東京電力との間で売電契約を締結できず太陽光発電事業ができないと判明したため、被告は、本件売買契約は「錯誤無効」であると主張し、売買契約の白紙撤回を求めました。

 被告が、本件売買契約の「錯誤無効」を主張し、残代金を支払わないことから、原告は、被告の債務不履行を理由に本件売買契約を解除したと主張して、被告に対し、約定違約金から手付金を控除した残金等の支払を求めた事案です。

太陽光発電の事業開発では、認定取得、系統連系(売電契約)、土地契約の交渉を並行して進める
太陽光発電の事業開発では、認定取得、系統連系(売電契約)、土地契約の交渉を並行して進める
(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]