日本のハードウエアスタートアップの先駆けであるMoff(本社・東京)。同社が手掛ける、スマートフォン(スマホ)と連携させて遊ぶ腕時計型の子ども向け玩具「Moff Band(モフバンド)」は、米国市場を中心に順調に売れているという。2015年11月には、米国の公共放送PBS(Public Broadcasting Service)の教育向け放送「PBS KIDS」との提携を決めた。事業が軌道に乗り始めたMoffはこれから、どこへ向かうのか。同社で代表取締役を務める高萩昭範氏のインタビュー後編では、今後の事業戦略について語ってもらった。

 子供向けだけでなく、高齢者向けの事業も今後展開したいと考えています。現在、フィットネスやリハビリをゲーム感覚でプレーできるアプリを開発中です。楽しいけど、運動になる。そんなものを目指しています。ある米国のヘルスケア分野の企業からの依頼がきっかけで、開発することになりました。

 ユーザー以外の人からは一見すると、ゲームをプレーしているように見えますし、ユーザー自身も、フィットネスやヘルスケアなどではなく、ゲームプレーが目的のように感じられるように設計しています。センサーで取得した現実の動きをゲーム体験にするのです。

Moffの高萩氏(写真:陶山 勉)
Moffの高萩氏(写真:陶山 勉、以下同)
[画像のクリックで拡大表示]

 そもそもMoff Bandも、動きにゲーミングの要素を入れたものです。画面からの解放を目指し、想像力を働かせながら動きや音などで楽しむものとして開発しました。

 米国では、ヘルスケアやフィットネス分野が大きな市場になっています。その分、競合は多い。そこで、Moff Bandの特徴である、子供から高齢者まで使い方が分かるようなシンプルなシステムに加えて、ゲーム要素を取り込んで差異化を図るつもりです。

Moffの高萩氏(写真:陶山 勉)
[画像のクリックで拡大表示]

 現在北米では、心拍数や血圧の検知といったヘルスケアモニタリングや、歩数や動きを検知するアクティブトラッカーが中心です。これらは、結局、「トラッキング」しているだけに過ぎません。

 体験をコンテンツ化するという概念がほとんどありません。言い換えれば、エンターテイメントの要素を入れようとする姿勢があまりない。そこに、「ゲーム」というスパイスをかけて、体験をコンテンツ化したいと思います。ゲームの要素を入れる「ゲーミフィケーション」というよりも、むしろ本当のゲームに近いものを目指しています。