本記事は、日本機械学会発行の『日本機械学会誌』、第119巻第1173号(2016年8月)に掲載された記事の抜粋(短縮版)です。日本機械学会誌の目次、購読申し込みなどに関してはこちらから(日本機械学会のホームページへのリンク)

 ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせたコンバインド・サイクル発電は、化石燃料を使う発電設備中で最も高い効率を発揮する。効率改善の主体はガスタービンの高温化に依存しており、三菱日立パワーシステムズ(以下 MHPS)も開発を進め、タービン入口ガス温度(以下 TIT)は2011年に1600℃に達した。これには高温部品用材料の改良・開発が寄与している。

ガスタービン用耐熱材料

 耐熱材料開発の歴史は、航空エンジンのタービン動翼用材料を中心につくられたといえる。すなわち、Ni(ニッケル)基超合金にAl(アルミニウム)、Ti(チタン)を添加するとγ’相が析出して強度改善が進み、真空溶解法の適用による活性元素の多量添加で高温強度が飛躍的に向上した。さらに一方向凝固(Directionally Solidified:以下 DS)合金や、単結晶(Single Crystal:以下 SC)合金が開発され、高温強度はいっそう向上している。

動翼用耐熱材料

 タービン動翼は最も重要な部品であり、動翼材の改良・開発はガスタービンの発展に大きく貢献してきた。クリープ強度、疲労強度が重要特性として要求され、製造面では鍛造性、鋳造性を兼備する必要がある。Ni基超合金にAl、Tiなど添加し、母相のγ相(Ni固溶体)中にγ’相が析出した2相整合組織とすることで、整合界面が変形転位の移動を妨げ、より高いクリープ強度を発揮する。

 現在、動翼材はNi基の鋳造合金が主流である。代表的普通鋳造合金(Conventional Casting:以下 CC合金)として「IN738LC」「IN792」「IN939」などがあり、米General Electric社(以下、GE社)はこれらの高温強度を上回る「GTD111」を開発した。国内では三菱重工業が「MGA1400」を開発し、量産機動翼材として本格的に適用してきた。