本記事は、日本機械学会発行の『日本機械学会誌』、第119巻第1173号(2016年8月)に掲載された記事の抜粋(短縮版)です。日本機械学会誌の目次、購読申し込みなどに関してはこちらから(日本機械学会のホームページへのリンク)

 1980年代からの電力需要の急増に対応し、天然ガス/LNG(Liquefied Natural Gas:液化天然ガス)によるガスタービン複合発電(GTCC)が注目され、大容量・高効率化が進められた。本稿では、GTCC高効率化に伴う低NOx燃焼器の開発や燃料多様化への対応と今後の展望について、三菱日立パワーシステムズ(以下当社)の大型ガスタービン燃焼器を中心に紹介する。

 GTCCは化石燃料を使う発電方式の中で最もクリーンとされる。シェールガス実用化でその安定供給は期待できるが、産地・燃料組成の異なるLNGを調達し1つの設備で使えるようにするニーズも高い。さらに、製鉄所の副生ガスや石炭ガス化ガスなどの利用、GTCCでの水素の大規模な利用の検討も進んでおり、それぞれ低NOx化や安定燃焼性のため燃焼技術開発が必要だ。

低NOx燃焼器の開発

 GTCCの高効率化を図るため、タービン入口温度(燃焼温度)を上昇させる開発の試みが進んでいる。従来の蒸気・水噴霧方式はサイクル熱効率が低下するため、乾式の低NOx燃焼器が開発された。予混合燃焼により蒸気・水噴霧なしでNOxを低減できるが、安定燃焼範囲が狭く燃焼振動やフラッシュバックのリスクがあり、未燃分も排出しやすい。実用化にあたってこれらを克服し、併せて商品性も向上させる必要がある。

 低NOx化の施策として、燃焼器の冷却用空気を減らし、燃焼用空気を増やして燃料と空気の混合気をより希薄にする、燃焼器内により均一な混合気を形成させ、燃焼領域の火炎温度を低減するなどが挙げられる。各社は独自に低NOx燃焼器を実用化してきたが、当社も低NOx化や安定燃焼、燃焼器冷却などの技術を開発。これを採用した天然ガス焚き低NOx予混合燃焼器で低いNOxレベルを達成した。