本記事は、日本機械学会発行の『日本機械学会誌』、第118巻第1162号(2015年9月)に掲載された記事の抜粋(短縮版)です。日本機械学会誌の目次、購読申し込みなどに関してはこちらから(日本機械学会のホームページへのリンク)

[1]鉄道システムの起源

 考古学調査により、ギリシャ・ローマ時代早期において、ある程度の延長にわたって溝が続く特徴的な道が発見されている。これは車両を意図的に案内するための軌道の一種と考えられる。CenchraeaとLechaionの港間を結ぶ道にもこの特徴が見られ、これらが紀元前600年〜紀元100年頃に使われていたことから、案内機能を固有の特徴とする鉄道システムは、2000年以上前に誕生したと考えることができる。

 15~16世紀、ヨーロッパ中央の山岳地帯で現代の鉄道システムにつながる第一歩が記された。これは木製車輪が2列の木製角材上を走行するもので、それまでの低品質な石材や降雨に弱い土構造の案内機構に取って代わったのである。さらに1784年に錬鉄が発明され、1820年に錬鉄レールが誕生。車輪とレールの摩耗や脆性破壊が格段に減少し、使用寿命も大幅に延伸した。また、木製車輪のタイヤ部や木製レールの車輪と接触する一部に鉄が使われ、フランジのない車輪用にL型レールが作られた。

 19世紀初頭までは鋳鉄製魚腹レールが代表的レールだったが、イギリスで発明された炭素鋼により転がり抵抗が小さく剛性の高い、鉄車輪と鉄レールの接触面が実現した。一方、1804年にRichard Trevithickが発明した蒸気機関車は、鋳鉄レールが何度も折損し脱線したため定置動力源とされたが、1825年にGeorge Stephensonが蒸気機関車Locomotion号を用いて世界初の鉄道の営業を開始した。