本記事は、日本機械学会発行の『日本機械学会誌』、第120巻第1184号(2017年7月)pp.20-23に掲載された「天気をこうかんするキカイ」の抜粋(短縮版)です。日本機械学会誌の目次、購読申し込みなどに関してはこちらから(日本機械学会のホームページへのリンク)
日本機械学会は創立120 周年記念事業として「未来マップ作成プロジェクト」を立ち上げた。機械の日(毎年8月7日)・機械週間(同8月1~7日)の企画行事として、幼児から中学生までを対象にした「絵画コンテスト」の応募作品を基に、それらを実際に実現するためのステップを考察(バックキャスト)し、未来の機械工学を想像することを目的にしている。

はじめに:作品の意図とバックキャスティング

 図1に示した「天気をこうかんするキカイ」の趣旨は、雨が降って外で遊べない地域と、乾燥して雨が降らない地域の天気を入れ替え、共に幸せになる道具が欲しいと解釈できる。まさに夢のキカイだが、これをバックキャストする作業は難航を極めた。第一にどのスケールで「天気をこうかんする」かだ。雨降りで遊べない子供たちのいる場所はグラウンド程度で、乾燥地帯で天気をこうかんするスケールも同程度と想定されるが、「天気」という現象は物理的により大きな範囲で生じるため、どう実現するか悩まされた。

 第二の要因は、描かれた天気交換後の乾燥地帯での植物の生育状況である。雨が降って遊べないところを晴天にする時間スケールと、乾燥地帯に雨を降らせて植物を育成させる時間スケールを比べると明らかに前者が短く、子供たちの要望に応えても、乾燥地帯にこの絵のような効果を及ぼすには別の工夫が必要と考えられる。こうした状況を踏まえつつ、できる限り作者の意図や夢を壊さずに何ができるか考えたい。

図1:2015年度「機械の日・機械週間」絵画コンテスト受賞作品「天気をこうかんするキカイ」
図1:「天気をこうかんするキカイ」
2015年度「機械の日・機械週間」絵画コンテスト受賞作品
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