本記事は、日本機械学会発行の『日本機械学会誌』、第119巻第1167号(2016年2月)に掲載された記事の抜粋(短縮版)です。日本機械学会誌の目次、購読申し込みなどに関してはこちらから(日本機械学会のホームページへのリンク)

 ヘリコプターの騒音は、主にブレード/渦干渉(Blade-Vortex Interaction:BVI)騒音、高速衝撃(High-Speed Impulsive:HSI)騒音、広帯域(Broadband)騒音がある。BVI騒音はローター・ブレードの翼端渦を後続ブレードが切り裂く時にブレード上に発生する圧力変動で発生し、主に着陸時に下方前方に伝わる。HSI騒音はヘリコプターが高速前進飛行する際にローター前進側に発生する衝撃波に起因し、主にローター回転面内の前方に伝搬する。広帯域騒音はブレード上の境界層乱れや後縁から発生する細かい渦などに起因する。ここでは、特にHSI騒音を解説する。

HSI騒音とは

 米国や日本のヘリコプターでは、ローターを上から見るとブレードは反時計回りに回転する。6時の方向(機体後方)を方位角0度とした場合、3時方向(右舷)を前進側、9時(左舷)の方向を後退側と呼ぶ。前進側では、ブレードの回転により流入する速度と機体の前進により流入する速度が合わさり、高速前進飛行の際、ブレード先端付近で流入速度が遷音速に達する。結果、ブレード翼面上に衝撃波が現れHSI騒音が発生する。

 HSI騒音の波形は、翼端マッハ数(MT)の増加に伴い、負のピークが高くなると共に鋸歯状となり非線形的特徴が顕著となる。翼端マッハ数が大きくなると、ブレード固定座標系から見たときブレード外側に現れる超音速領域と、ブレード翼面上の超音速領域がつながる非局所化現象が発生し、衝撃波で生じた強い擾乱が遠方まで達するといわれている。