本記事は、日本機械学会発行の『日本機械学会誌』、第120巻第1179号(2017年2月)に掲載された記事の抜粋(短縮版)です。日本機械学会誌の目次、購読申し込みなどに関してはこちらから(日本機械学会のホームページへのリンク)

[1]超電導磁石と地上コイル

 超電導リニアの最大の特徴は時速500kmの高速で浮上走行することで、これに不可欠な技術が超電導磁石である。超電導とは、ある種の物質を極低温に冷却すると電気抵抗がゼロになる現象。超電導リニアではニオブチタン合金で作った超電導コイルを液体ヘリウムで4K(-269℃)に冷やして使う。

 このコイルは、電気抵抗がゼロで電流を流しても発熱せず、断面積の小さいコイルに大電流を流せて非常に強い磁界を発生できる。地震国の日本で高速浮上走行を安全に行うため、車両と軌道の空隙を10cm程度確保するには超電導磁石が必須である。冷却した超電導コイルに所定の電流を流すと減衰せずに流れ続け、外部からの電力供給は不要で永久磁石のように使える。

 超電導リニアの軌道は、車両下半分が収まるU字型でガイドウェイと呼ばれる。その側壁部に付けられる地上コイルは超電導ではなく、アルミニウム合金や銅など一般的な導体のコイルだ。リニアモーターの地上側を構成する「推進コイル」と車両を浮かせる「浮上案内コイル」があり、側壁の表面には浮上案内コイルが、その奥には推進コイルが重ねて配置される。

[2]どうやって走り、どうやって浮くのか

 超電導リニアの推進方式は、地上1次リニアシンクロナスモーター方式である。「地上1次」とは走行に必要な電力を地上側の推進コイルに供給する方式で、走行のための電力を車両に供給する必要はない。「リニアシンクロナスモーター」とは、同期電動機を切り開いて直線状に長く引き伸ばしたもの。車両の超電導磁石は永久磁石を用いた回転子、地上の推進コイルが固定子に相当する(図A-上 参照)。

 車両の位置・速度を位置検知システムで正確に検知し、地上側の推進コイルに適切な周波数の交流電流を流すことで、車両と同速度で動く移動磁界を作る。超電導磁石に前向きの吸引力・反発力を生じる位相とすれば推進力が得られ、位相を反転させれば制動力が得られる。走行開始から加速・減速・停止までを同一設備で行え、最高速度までの全速度に対応できる(図A-下 参照)。

図1 推進の原理
図1 推進の原理
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