本記事は、日本機械学会発行の『日本機械学会誌』、第119巻第1166号(2016年1月)に掲載された記事の抜粋(短縮版)です。日本機械学会誌の目次、購読申し込みなどに関してはこちらから(日本機械学会のホームページへのリンク)

 介護・福祉分野、農業や建設業、製造業などの作業者の能力強化や補助、負担軽減のための支援器具としてパワーアシストシステム(PAS)が研究開発されている。その形態には装着型、非装着型がある。

装着型パワーアシスト・システム

 装着型PASは外骨格型と内骨格型があり、前者は高剛性の骨格構造を外部に装着する。人の耐荷重以上の負荷を受け、重量物を持ち上げ障碍者を歩行させるなど増力や能力強化を図れるが、動作を妨げるのが短所で、高い安全性が必要になる。内骨格型は柔軟な素材で構成され、Soft Exosuitやスマートスーツ、スマートスーツ・ライト(以下 SSL)がある。柔軟な構造で動作や関節可動域を制限せず、自然な操作感、装着感があるが、人の耐荷重以上の負荷は危険だ。

 PASの駆動方式は、アクティブ型、パッシブ型、ハイブリッド型がある。アクティブ型はアクチュエーターで補助力を制御し、動作や姿勢、筋力に応じて最適なアシストを行うが、高い安定性、安全性が必要だ。パッシブ型は機械ばねや弾性繊維、エアスプリングなどの受動素子で補助力を得る。特に弾性繊維のものは軽量かつ柔軟で人に優しいが、多様な動作はアシストできない。ハイブリッド型はアクチュエーターと受動素子を組み合わせ、アクティブ型より小型軽量でパッシブ型より多様な動作に対応し、安全性も高い。

 装着型PASの介護・福祉分野での主用途として、移乗介助や排泄介助での介護者支援や、歩行リハビリや上肢リハビリにおける患者支援がある。例えば、介護者上腕に装着する電動外骨格型PASやMcKibben型ゴム人工筋、空気圧駆動PASがある。世界初の実用化PASのロボットスーツHALや外部動力のない補装具のパッシブ型PAS、体表面長さ変化を用いた介護者腰部負担軽減衣服も開発された。