本記事は、日本機械学会発行の『日本機械学会誌』、第120巻第1178号(2017年1月)に掲載された記事の抜粋(短縮版)です。日本機械学会誌の目次、購読申し込みなどに関してはこちらから(日本機械学会のホームページへのリンク)

 建材中のアスベストは目で見ても分からない。2013年、東急建設技術研究所は、この「アスベストが見えるカメラ」を開発した。近赤外光で照らした建材を近赤外カメラで撮影し、コンピューターで瞬時に解析。アスベストを含む箇所を赤や黄色の点でモニターに表示する。従来は1度にわずかな面積しか調べられなかったが、約20×16cmを約4秒で調べ、画像も見られる世界初の技術だ。

アスベストからの近赤外光を検出

 その仕組みは次のようなものだ。まず建材表面から塗装などを取り除き、近赤外光を多く含むハロゲンライトの照明光を当てる。アスベストは近赤外光中の特定波長の光を多く吸収するため、多く吸収される場所にアスベストがある。反射した光を液晶フィルター(透過波長はコンピューターで切り替え可能)に通し、近赤外光を選別して撮影。その信号をパソコンで処理しアスベストの位置を表示する。

 開発した東急建設 技術研究所メカトログループは、建設ロボットを研究開発する機械電気系チームで、約10年前から建設廃棄物の選別ロボットも開発していた。当時、同グループは、目視での作業だった廃棄物の選別を自動化するためのセンサを調べていた。

 開発のきっかけは、研究員が耳にした「近赤外光でアスベストを検出できる」という情報だった。ならば近赤外カメラで撮ってアスベストを映るようにできないか。まずは予算獲得のため環境省の助成事業に応募。そのプレゼンテーションを行ったのは2011年3月14日。東日本大震災の直後だった。