太陽光発電所は、従来の大規模集中型のシステムに比べ1カ所当たりの出力が小さく、多くの施設が地域に分散するのが特徴となっている。固定価格買取制度(FIT)によって大量に導入され、買取期間が終わった後、地域に根付く安い電源として、電力の供給を続け、主力電源の一つとなることが期待されている。そのためには、保守やメンテナンスの担い手が地域に必要になる。日本の太陽光発電産業で、重要性が指摘されていながらなかなか追いついていない部分ともいえる。九州の中小企業が団結し、こうした役割を担おうとの動きが出てきた。

 今年10月、宮崎市で太陽光発電のメンテナンスに関するセミナーが開催された(図1)。メンテナンス関連に必要な技術や業務の流れのほか、さまざまなトラブル事例と適切な対処方法などを解説した。太陽光パネルの不具合から、接続箱の焦げ、雑草の放置による火災などの危険性など、多岐にわたった。

図1●宮崎市で10月に開催されたセミナーの様子
図1●宮崎市で10月に開催されたセミナーの様子
太陽光発電所の施工やメンテナンスに関わる地元企業の担当者などが聴講(出所:日経BP)
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 例えば、セル(発電素子)に白い筋状の模様ができる「スネイルトレイル」が発生した太陽光パネルに対して、一般的にパネルメーカーは一定以上の出力低下が認められなければ保証による交換には応じないこと、また、施工不良と指摘される可能性のある、施工時の不注意などを挙げ、注意を促していた。

 このセミナーは、一般社団法人・太陽光発電アフターメンテナンス協会(福岡市博多区)が、九州経済産業局、宮崎県、九州環境エネルギー産業推進機構、九州経済調査協会と共催したものだ。

 太陽光発電アフターメンテナンス協会は、九州において、太陽光発電のメンテナンスに関する情報共有や、共通化できる技術の標準化などを目指している。地域の中小企業をはじめ、全国的に太陽光発電関連の事業を展開している企業などが加盟している。

 セミナーは活動の1つに過ぎない。メンテナンスに関する作業などのうち、共通化できる項目については、標準化を目指している。外観検査の手法のほか、機器を使った太陽光パネルやパワーコンディショナー(PCS)の点検方法などを想定している。

 このほか、太陽光発電事業者に対するメンテナンスの支援、O&M(運用・保守)事業者に対する研修・教育に取り組んでいる。

 現在、地元の企業など約20社・団体が加盟している。2018年には、100社・団体程度に増やしたいとしている。

 地元で太陽光発電関連を手がける、工(たくみ)オフィスの宗貞貴洋代表取締役が、同協会の代表理事を務めている。

 宗貞氏が経営する工オフィスの場合、太陽光発電の施工のほか、メンテナンス事業にも特に力を入れている(図2)。20年間にわたる収入を見込めること、地元に多くの太陽光発電所があるために事業機会が多いこと、現地に出向いて作業する日時に幅を持たせやすく、他の仕事との調整がしやすいこと、などが魅力となっているという。

図2●地域の企業がメンテナンスする利点は双方に大きい
図2●地域の企業がメンテナンスする利点は双方に大きい
(出所:太陽光発電アフターメンテナンス協会、工オフィス)
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