大阪府河南町の山あいに、連系出力50kW未満となる事業用の低圧太陽光発電所が2カ所、並んでいる(図1)。周囲には、連系出力2MW未満となる高圧連系のメガソーラー(大規模太陽光発電所)も4カ所ある。

図1●低圧と高圧あわせて6カ所の太陽光発電所
図1●低圧と高圧あわせて6カ所の太陽光発電所
2カ所は他社が所有(出所;上は日経BP、下はエイワット)
[画像のクリックで拡大表示]

 これらの6カ所の太陽光発電所は、エイワット(大阪府堺市)が開発した。高圧案件のうち2カ所は、竣工後に他社に売却している。

 同社は、栄和鉄工所として1972年に設立され、1990年代から太陽光発電や風力・水力発電などの再生可能エネルギー発電を手がけてきた。太陽光では開発から施工、運営まで担い、開発や施工の実績として高圧案件が29カ所・合計出力173MW、低圧案件は500カ所・合計出力41.5MWとなっている。

 蓄電池の併設や小水力発電にも積極的に取り組んでいる。

 河南町で並ぶ低圧案件の2サイトでは、太陽光パネル1枚ごとに遠隔監視や最適制御できるシステムを1サイトだけに採用した。もう1サイトでは採用せず、ほかの設備はまったく同じため、「パネルごと監視・制御システム」の効果を比較できる。

 河南町の2カ所の低圧サイトは、いずれも太陽光パネル容量は67.2kW、連系出力・パワーコンディショナー(PCS)の定格出力は49.5kWとなっている(図2)。

図2●同じ出力の低圧連系の発電所が並ぶ
図2●同じ出力の低圧連系の発電所が並ぶ
太陽光パネルはJAソーラー製、PCSはSMAソーラーテクノロジー製(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]

 いずれも固定価格買取制度(FIT)の設備認定による買取価格は32円/kWh(税抜き)で、売電開始日は2015年6月12日、現在はNTTスマイルエナジーの遠隔監視サービス「エコめがね」の提携先の新電力に売電している。

 太陽光パネルは、中国JAソーラー製(280W/枚)を採用し、それぞれ240枚ずつ設置している。PCSは、ドイツSMAソーラーテクノロジー製を採用し、出力9.9kW機を5台ずつ設置した。

 「パネルごと監視・制御システム」は、米Tigo Energy製の「マキシマイザー」と呼ばれるユニットを導入することで実現した。JAソーラーが同ユニットを組み込んだパネルをスマートモジュールとして製品化しており、それを導入した。

 エイワットが、低圧2カ所のうち片方のみで、マキシマイザー付きの太陽光パネルを採用したのは、この発電所の南側に、3本の電柱が立っているために、パネルに影がかかり、発電量を下げてしまうことが予想されたからだった(図3)。

図3●南側に電柱が立っている
図3●南側に電柱が立っている
太陽光パネルに影を落とす(出所:エイワット)
[画像のクリックで拡大表示]

 もう1カ所は、この土地に隣接するものの、電柱の影はかからない。

 マキシマイザーは、太陽光パネル裏面のジャンクションボックスの付いている位置にあり、従来のジャンクションボックスとマキシマイザーの機能が統合されている(図4)。後付けできるタイプも製品化されている。

図4●黒い端末がマキシマイザー
図4●黒い端末がマキシマイザー
Tigo Energy製のマキシマイザー付きのJAソーラー製の太陽光パネルを採用した(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]

 マキシマイザーの機能は、いくつかある。取り付けられた太陽光パネルが直列で接続されたストリング単位で出力を最大化すること、太陽光パネルごとの発電中の電流と電圧の数値を送信することなどだ。

 実質的に、ストリング単位の最大電力点追従(MPPT)制御を実現しながら、パネル単位で遠隔監視できる。

 さらに、太陽光パネルに不具合が生じた場合、そのパネルをストリングの回路から切り離し、同じ直列回路につながる他のパネルからの出力を低下させない機能も備える。

 この機能は、発電所全体の出力ロスを最小化するだけでなく、不具合の生じているパネルを回路から遮断することで、安全性を高める効果もある。

 マキシマイザーが取得した太陽光パネル1枚ごとの電流、電圧のデータは、まず無線でゲートウェイ(データ収集装置)に送信される(図5)。河南町の発電所では、ゲートウェイは3カ所に設けた。これもパネルの裏に設置されている。

[画像のクリックで拡大表示]
図5●ゲートウェイ(上)と中央監視装置(下)
図5●ゲートウェイ(上)と中央監視装置(下)
ゲートウェイまでは無線で、そこから先は有線のLANで送信(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]

 ここからは有線のLANで、中央監視制御装置(メインボックス)にデータを送信する。中央制御監視装置は1カ所で、架台に固定されていた。同装置からは、インターネット経由でデータを送信し、パソコンや携帯端末で確認できる。

 ゲートウェイからの有線のLANは、電源ケーブルを使う。このケーブルは、電線と通信線を兼ねている。電源は集電箱から確保しているので、太陽光発電の電力を使える。