レーザでは、その高いパワー密度から、照射条件によっては人体に有害となる可能性は決して低くない。ときおり報道される、スポーツ選手や航空機の操縦者らへのレーザ照射の事例では、高強度なレーザが用いられたとの報告もあり、規制を超えたパワーレベルのレーザポインタが入手可能なケースが存在している現状も伺える。また上記の事例に限らず、特に目への具体的な傷害が報告されるようになっている。さらに、LEDに代表される固体素子照明(SSL)においても、ハイパワー化(高輝度化)や短波長化が急速に進んでいるほか、高強度な紫外放射源を搭載した機器の民生化なども進んでいる。

 こうした光源技術の進化と普及に伴い、光生物学的安全性への注目が高まっており、光源・放射源が人体に及ぼす傷害リスクの程度を、定量化された光放射の測定データに基づき表明する流れが世界的に進んでいる。リスク評価結果は、製品安全に基づく規制やマーキングなどの運用の根拠となるものであり、その基本的考え方を定めた国際規格の制定がIECなどの国際標準化団体で進められている。代表例として、欧州域でのCEマーキングがあり、対応規格に基づく評価・認証の運用が求められている。我が国においても、製品安全の中での具体的な運用の検討が進められている。

 本稿では、光生物学的安全性の評価全般に係る国際標準化の状況を概説するとともに、代表的な測定上の課題を紹介する。なお、本稿は対応する規格などの厳密な解釈を示すことを目的としていないため、実運用上の疑問点などについては、審議団体へ直接ご照会いただきたい。