自動車用外装ランプへのLED搭載は1988年のハイマウントストップランプから始まり、ストップ/テールランプ、ターンシグナルランプへと初期の段階では標識灯を中心に適用範囲を拡大してきた。一方、白色LEDは1995年に実用化されたが、ヘッドランプ光源として用いるには高光束と高輝度の両立が必要1)であるため、当初はヘッドランプへの搭載には時間がかかると思われていた。しかし、LEDの大電流化、チップサイズ拡大などの技術革新が急速に進み、2007年には白色LEDを光源とした前照灯が実現した。白色LEDは従来の電球光源とは形状、発光分布などがまったく異なり、また光線に赤外線を含まないなど様々な特徴がある。本稿では、その特徴とそれらを活かしたLEDヘッドランプについて光学系を中心に概説する。

ヘッドランプ用光源の進化とその特徴

ヘッドランプ用光源の進化

 ヘッドランプは、夜間安全走行のために、図1のように光源の進化とともに性能を向上させてきた。

図1 光源とヘッドランプ性能の進化
図1 光源とヘッドランプ性能の進化
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 従来のハロゲン電球、HID電球などの電球光源は発光管の中で4~5mmの発光部(フィラメントまたはアーク)が高温で発光し、1つの光源でヘッドランプ配光を形成するのに十分な光量が得られる。一方、ヘッドランプ用LEDの性能進化を図2に示す。開発当初は1チップ当たりの光束、輝度が従来の電球光源に比べて少なかったが、現在ではHID電球と同等の性能が得られるようになった。

図2 ヘッドランプ用LEDとその性能
図2 ヘッドランプ用LEDとその性能
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