さまざまな工場で使われる有機溶剤。その濃度を抑えるため、現在は空調を常に稼働させていることが多い。有機溶剤の濃度を測定できれば、空調の稼働時間を最適化でき、大幅な省エネ化が見込める。NMEMS技術研究機構、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による共同研究事業「グリーンセンサ・ネットワークシステム技術開発プロジェクト」(2011年度~2014年度)では、無線センサーネットワークで有機溶剤を測定し、空調を制御する技術が開発された。この技術を開発したオリンパスの白石直規氏が、同プロジェクト最終成果報告会(2月26日開催)で内容を明らかにした。以下は、同氏の「センサネットワーク用VOC濃度センサの開発」と題する講演から構成した。

図1●VOCは工場での必需品だが、健康被害の恐れも
図1●VOCは工場での必需品だが、健康被害の恐れも
ポンプやファンによる排気で許容濃度以下に保つ(出所:オリンパスの白石氏)
[画像のクリックで拡大表示]

 VOC(volatile organic compounds:揮発性有機化合物)は、有機溶剤の総称である。大量に摂取すると、健康に被害が及ぶ恐れがある。このため、法律によって規制されている(図1)。

 工場にとってVOCは必須ともいえる物質である。印刷工場、半導体工場では溶剤として使われ、石油工場では石油そのものが含んでいる。そこで工場では、ポンプやファンによる排気システムを使い、環境内のVOC濃度を許容濃度以下に保っている。