未来機械(高松市)は、香川大学の研究者が中心となって創業したベンチャー企業である。太陽光パネルの清掃ロボットなどを開発している。

 同社の太陽光パネル清掃ロボットは、自律的に走行・清掃するほか、水を使わずにパネル上をきれいにすることを特徴とする(動画1関連コラム)。太陽光パネル上に積もった砂埃などを、回転ブラシで掃き、ファンでパネル外へと吹き飛ばす。

動画1●自動で走行・洗浄
高松市のラボにおける様子(出所:日経BP)

 太陽光パネルの上を自動で走って清掃するので、Liイオン蓄電池の交換や、アレイ(太陽光パネルを架台に固定する単位)とアレイが大きく離れている場合の移動時だけ人手を必要とする。

 同社ではターゲットとする市場として、太陽光発電市場が急速に伸びている地域で、かつ、太陽光パネルの汚れが酷く、頻繁に人海戦術的に清掃する必要がある地域を挙げている。現在では、中東やインドの市場開拓や拡販に取り組んでいる。

 いずれも、砂塵が太陽光パネルに積もることによって、発電量が目に見えて低下することが確かめられている地域である。

 日本のように、土埃や火山灰が積もっても、週に1日程度は雨が降ることでほぼ流れ落ちる地域とは、汚れによる影響が大きく異なる。また、水洗いが必要になる鳥のフンによるパネルの汚れは、聞いたことがない地域だという。

 こうした地域では、砂漠を中心とする場所にメガソーラー(大規模太陽光発電所)が設置されており、水が貴重で高価なことも、同社の清掃ロボットを使う利点となる。

 気温が高く、人手による清掃作業が過酷なことも、自律走行する清掃ロボットを使う利点となる(図1)。

図1●人手による清掃の様子
図1●人手による清掃の様子
10日~1カ月に一度の頻度で実施されている。放置するとすぐに発電量が10%以上低下する(出所:未来機械)
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 中東では、日中の最高気温が40℃を超える日も多い。カタールのように、気温が40℃を超えると、屋外での人による作業が法によって制限されている国もある。

 同社の三宅徹社長によると、例えば、中東の多くのメガソーラーでは、10日間から1カ月間に1回は、太陽光パネルを人手で清掃しているという。清掃しないで放置すると、1カ月間で10~15%程度、発電量が減少するためである(図2)。

図2●サウジアラビアのメガソーラーにおける清掃の様子
図2●サウジアラビアのメガソーラーにおける清掃の様子
自動走行・清掃により効率を向上(出所:未来機械)
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 このように、頻繁な清掃がメガソーラーのO&M(運用・保守)に組み込まれている地域で、清掃ロボットの活用に利点が出てくる。

 中東のメガソーラーでは、同社のロボットを使うことで、人手に比べて、清掃コストが約80%下がるという。ただ、インドの場合、中東より人件費が安いので、清掃コストの削減率はこれよりは小さい。

 コスト削減分とロボット購入費の差し引きで、3年以下で導入費を回収できるとしている。

 2013年に開発に着手し、試作機で検証を重ねた後、中東やインドにおける太陽光発電市場の活性化と、ロボット開発の進捗のタイミングを合わせ、2015年にはベンチャー投資家からの出資を仰いだ(関連ニュース)。

 そして、清掃ロボットの営業体制を強化するとともに、量産に適した機種を開発し、現在は、サウジアラビア、カタール、UAE(アラブ首長国連邦)のメガソーラーで採用され、日々の清掃に使われている。これまでに数台を納入した。