草刈りに悩む果樹園向けに開発

 こうした乗用型の草刈機を販売しているメーカーの一つが、オーレック(福岡県八女郡広川町)である。この分野の大手として知られている。同社のほか、複数の企業が手掛けている。

 草刈機は、主に農業機器メーカーが手がけている。同社も、大橋農機製作所として1948年に創業し、まず動力脱穀機や小型製縄機を手掛けた。乗用型の草刈機や芝刈機にも乗り出し、今では、国内だけでなく欧州などでも販売を伸ばしている。材料の加工から組み立てまで、本社工場で一貫生産している。

  草刈機は当初、主に果樹園で使われたという。果樹園での草刈りは、毎年5月末~8月末に、年6~7回必要となる。作業負担が重く、その軽減が課題となっていた。

  当時、果樹園でよく使われていた草刈機は、刈払機などと呼ばれるタイプが多かった。腰にベルトを巻いて支え、両手を使って、回転刃を宙に浮かせて操作するタイプである。

 この作業を軽減する手法として、まず開発したのは、歩行型の草刈機だった。タイヤを使って地面の上を走らせるタイプである。ハンドルを押して前に進み、草刈ユニットの刃の回転はハンドルのボタンを使って制御する。

 歩行型は、主に十町(約10ha)以上の果樹園などで使われるようになった。それ以下の規模では、従来型の刈払機が主に使われ続けていた。

 より省力化できる草刈機として、1990年代前半に開発したのが、乗用型だった(図2)。乗って走り回れることで、歩く負担も減らした。

図2●当初の乗用型の草刈機
図2●当初の乗用型の草刈機
前方に草刈りユニットを取り付けていた(出所:オーレック)
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 当初、展開したのは、前方に草刈りユニットを取り付けたタイプだった。

 歩行をなくした効果は大きく、製品化直後から広く受け入れられたものの、課題もあった。前方に長い形状のため、傾斜に弱いこと、運搬に2tトラックが必要なことだった。