本記事は、応用物理学会発行の機関誌『応用物理』、第86巻、第7号に掲載された「全炭素極大容量2次電池の開拓」の抜粋です。全文を閲覧するには応用物理学会の会員登録が必要です。会員登録に関して詳しくはこちらから(応用物理学会のホームページへのリンク)。全文を閲覧するにはこちらから(応用物理学会のホームページ内、当該記事へのリンク)。『応用物理』の最新号はこちら(各号の概要は会員登録なしで閲覧いただけます)。

電池極を炭素素材であるバイオ資源由来の活性炭で構成した全炭素極2次電池を提唱し、そのユニークな動作原理と基本性能を紹介する。長サイクル性を得意とするこの素朴で新しい2次電池は、容量・エネルギー密度において従来のスーパーキャパシタを凌駕(りようが)し、鉛(Pb)蓄電池の領域に迫ってきている。資源・環境・コスト性に鑑み、太陽電池などの種々クリーンエネルギーを有効に利用する大容量2次電池としてのポテンシャルを実証した。

 人類が大量消費してきたエネルギー資源の“枯渇”が顕在化し、近未来に向けた新たなエネルギー開発が社会問題として浮上してきた。無尽蔵と見なされていた化石燃料資源の“有限性”を突きつけられ、発電-蓄電を全てクリーンかつ再生資源で実現する新技術が遠い先などではなく緊急の課題となってきた。この課題に応えるべく日本国内でもエネルギーを貯蔵するバッテリ(2次電池)に関して、(国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)がロードマップを策定し、電池効率-資源性-コストまでを含む詳細な目標値が設定された1)。現在、その実現に向けて多くの研究者が革新的な2次電池2)へ挑戦しているが、その奮闘ぶり?は応用物理学会で活動・活躍されている読者にはなじみが薄いかもしれない。現在、実用に供されている2次電池の多くはPbやNi系2次電池のように酸化-還元をベースにした電気化学反応を基礎にしていることから、応用物理学よりは化学分野の研究者の得意分野とされてきたことがあろう。しかし、大容量の電気エネルギーを可逆的に貯蔵-放出する機能を新しいエネルギー材料から探索する研究では、基本的な技術・アイデアは化学-応用物理の両面あるいは境界分野から発掘される可能性があるように思われる。本稿では新材料の開拓を専門とする応用物理学系の多くの研究者に挑戦していただくことを期待し、大規模太陽光発電のエネルギーをバックアップする低コスト・大容量2次電池研究の一例を紹介する。