本記事は、応用物理学会発行の機関誌『応用物理』、第85巻、第6号に掲載されたものの抜粋です。全文を閲覧するには応用物理学会の会員登録が必要です。会員登録に関して詳しくはこちらから(応用物理学会のホームページへのリンク)。全文を閲覧するにはこちらから(応用物理学会のホームページ内、当該記事へのリンク)。『応用物理』の最新号はこちら(各号の概要は会員登録なしで閲覧いただけます)。

型押し成形方式のナノ造形技術であるナノインプリント技術を採用して、光学部品などの製造が広がりつつある中、今度は半導体関連企業が次世代リソグラフィ技術として採用する動きが出てきた。本稿では、ナノインプリントリソグラフィの現状を概説する。基板とレジスト樹脂との界面で機能する密着分子層や、レジスト樹脂とモールドとの界面で機能する離型促進分子層、成形と離型プロセス化を可視化する蛍光光硬化性液体の鍵となる材料を取り上げ、離型に関わる筆者らの学術研究を中心に述べる。モールド、樹脂、塗布、成形/離型、ドライエッチング、アライメント、平坦化/積層、欠陥検査の一連のナノデバイス製造工程で鍵を握る材料とプロセスにおける実用化への課題、さらには線幅サブ20nmのパターニングでの学術的な課題を抽出した。

 昨年2015年2月に、国内の半導体関連企業が沈黙を破り、プレスリリースしている。キヤノン(株)は、「買収した米国ベンチャー企業Molecular Imprints社のナノインプリント技術に独自のアライメント技術を組み込み、次世代半導体露光技術を開発」。大日本印刷(株)は、「石英のフォトマスク製造技術を基に、半導体向けナノインプリント石英モールドの量産開始」。(株)東芝は、米国でのSPIE Advanced Lithography 2015において東木氏らが“Device Fabrication Using Nanoimprint Lithography”を発表1)、ビッグデータ時代に向けたフラッシュメモリなどのストレージ事業にナノインプリント技術の採用を検討開始し、300mmウェーハで、欠陥密度が数個台、寸法均一性(CD Uniformity、3σ)が<0.5nm、最新装置で重ね合わせ精度(overlay accuracy)がmean+3σで<4.8nmが達成され、量産採用に足るレベルに達しつつあるという。

 「Canon EXPO 2015 Tokyo」で、キヤノンはナノインプリントで11nmの半導体の製造を確認している。現行のArF液浸フォトリソグラフィとダブルパターニングやマルチプルパターニングの組み合わせによる半導体微細加工に加えて、ナノインプリントリソグラフィ(Nanoimprint Lithography:NIL)が半導体応用に採用される動きが出てきた。