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HOMEスキルアップCOLLEGE応用物理学会から > スピン流体発電~非磁性金属の流体運動から電気エネルギー

応用物理学会から

スピン流体発電~非磁性金属の流体運動から電気エネルギー

  • 松尾 衛=国立研究開発法人日本原子力研究開発機構先端基礎研究センター
  • 2017/03/07 05:00
  • 1/7ページ
本記事は、応用物理学会発行の機関誌『応用物理』、第86巻、第1号に掲載されたものの抜粋です。全文を閲覧するには応用物理学会の会員登録が必要です。会員登録に関して詳しくはこちらから(応用物理学会のホームページへのリンク)。全文を閲覧するにはこちらから(応用物理学会のホームページ内、当該記事へのリンク)。『応用物理』の最新号はこちら(各号の概要は会員登録なしで閲覧いただけます)。

スピントロニクスにおける最重要課題の1つが、スピンの流れ「スピン流」の生成制御である。近年の微細加工技術の進展によって、スピン流を媒介とする多様な物性現象が探索されている。本稿では、スピン流を媒介して液体金属流体運動から電圧を発生する「スピン流体発電」を紹介する。回転体中に普遍的に現れる相互作用、スピン回転結合により、物体の力学的角運動量とスピンとが相互変換される。その結果、細管に流した液体金属中の渦度分布からスピン流が生成され、管に沿った方向に電圧が生じる。これはスピントロニクスに動力を組み込む試みであり、MEMSとスピン流の融合したデバイス開発が期待される。

 スピントロニクス分野における中心概念の1つが、電子スピンの流れ「スピン流」である1)。スピン流利用によって、大幅に消費電力が抑えられた磁気デバイスや耐放射線性デバイス開発といったさまざまな応用が期待されている。従来のエレクトロニクスで利用されてきた電流は保存流であったのに対して、スピン流は非保存流であり、物質中のさまざまな散乱過程によってスピン偏極方向は乱され、ナノスケールで減衰してしまう。したがって、スピン流の制御には高度な微細加工技術を要し、近年になってようやくスピン流を媒介とする物性現象の探索が可能となった。

 従来のエレクトロニクスでは、回転や振動といった機械運動と電流との相互変換機構がよく知られており、発電機や圧電センサのように回転や振動といった機械運動を電流に変換したり、モータのように電流を機械運動に変換するデバイスが実現しており、電子回路を機械要素部品、アクチュエータ、センサとともに微細加工技術によって集積化したMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)/ NEMS(Nano Electro Mechanical Systems)デバイスの応用も盛んに進められている。スピントロニクスにおいても機械運動とスピン流との相互変換が実現できれば、MEMS/NEMSとスピントロニクスの融合したデバイスへの道が開ける。本稿では、機械運動とスピン流の相互変換として、特に液体金属の流体運動からスピン流を生成する新現象を紹介する2)

 機械運動とスピン流の相互変換機構について考えるために、電子に対する直観的なイメージを更新することから始めよう。多くの人にとって、「電子= 電荷をもった球体」だろう。直接見たり触ったりすることのできない電気伝導現象を、「電荷をもつ球体」の散乱というアナロジーによって思いを巡らすことができる。しかし、残念ながら従来のイメージには「スピン」が不在である。そこで、「電子= 回転する歯車のくっついた磁石」というイメージを提案したい(図1)。電子はスピンに起因する性質として磁気的自由度である磁気モーメントをもつと同時に、力学的自由度である角運動量をもっている。つまり、電子は小さな(実際には電子は素粒子であり大きさをもたないが)永久磁石であるとともに永久に回転し続ける歯車であるといえる。電子スピンの磁気モーメントとしての性質を「磁石」で、角運動量としての性質を「回転歯車」でそれぞれ表したのが図1である。

図1 電子のイメージ。電荷をもった球体としてのイメージは電気伝導現象を直観的に把握するのに役立つ。一方、スピン流を伴う伝導現象の理解には、スピンの磁気的性質を反映した「永久磁石」と、力学的性質を反映した「永久回転歯車」が合体したものを想像するとよい。
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