1軸の追尾式架台で発電量15%増加

 市民エネルギーちばでは、ソーラーシェアリングに関連した技術開発にも取り組んでいる。同社は、元大手農機具メーカーの設計開発者だった長島彬氏(CHO技術研究所・代表)の考案したソーラーシェアリング用の基礎・架台を採用している。

 単管パイプを藤棚のように2.5~3.5mの架台を組み上げ、24セル(発電素子)程度の幅の狭い太陽光パネルを並べる。短冊状のパネル間のすき間をパネル幅の2倍空けることで、遮光率は約3割になる。長島氏はすでに2004年にこの方式を開発し、特許を申請したという。

 ただ、単管パイプを使った架台では、ジョイント金具で接合部を固定するため、その強度や耐久性が課題になる。そこで、支柱と梁の全接合部には、単管パイプを斜めに取り付ける「方杖(ほうずえ)」を4カ所、装着して補強した。

 市民エネルギーちばは、方杖用の結合具を独自に開発・製品化し、強度と施工性を高めている(図10)。「農家が自分で組み上げたり、修理したりできるような構造にしておけば、施工コストが大幅に下げられ、事業性も高まる。農家が自分の農地でソーラーシェアリングを行えば、買取価格が20円/kWhを下回ってもやれる」(東さん)という。

図10●単管パイプの方杖(ほうずえ)には独自の結合具を開発した(出所:日経BP)
図10●単管パイプの方杖(ほうずえ)には独自の結合具を開発した(出所:日経BP)
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 また、藤棚式ソーラーシェアリングの原型を作った長島氏は、市民エネルギーちばなどと協力して、2014年に1軸の可動式(追尾型)架台を開発した。従来の藤棚式はパネルを固定するため、南向きに設置するが、可動式の場合、太陽の動きに合わせて東から西に向きを変えるため、東西向きに設置する。

 イージーパワーの低圧連系の営農型発電所にはすでに可動式架台を採用している(図11)。午前9時から日没までは、日を追って東向きから真上(水平)、西向きに自動で動き、台風など強風時や曇りの日は、水平にする。これまでの結果では、可動式にすることで約15%の発電量増大効果があるという。

図11●新開発の可動式(追尾型)架台はパネルを東西向きに固定する(出所:日経BP)
図11●新開発の可動式(追尾型)架台はパネルを東西向きに固定する(出所:日経BP)
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 太陽の恵みを作物とパネルが効率的に分け合うため、組織的にも、技術的にも、新たな試みが始まっている。地力に乏しく、耕作放棄地の増加で、地域のお荷物だった地区が、ソーラーシェアリングのメッカとなり、新しい農業を発信する先端エリアなりつつある。