くまモンと一緒にお披露目

 熊本県山都町にある水増集落は、阿蘇カルデラを形作る南外輪山にあり、豊かな自然に恵まれている。ただ、主体となる農林業の担い手が減り、高齢化と少子化が進んでいる。戦後は約100人が農業に従事したが、若者が次第に集落を離れ、今や10世帯19人まで減った。平均年齢は約70歳。20年後の存続が危ぶまれる限界集落の1つだ。

 「水増ソーラーパーク」は、同集落が共同で管理する入会地に建設された(図3)。20~30度の山腹の斜面、3.4haに約8000枚の結晶シリコン型太陽光パネルを土地なりに敷き詰めた。熊本県の新エネルギー開発のベンチャー企業、テイクエナジーコーポレーション(熊本県菊陽町)が、土地を賃借し、太陽光発電所を建設・事業化した。

図3●「水増ソーラーパーク」
図3●「水増ソーラーパーク」
(出所:日経BP)
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 水増集落では、メガソーラー完成に際し、「水増ソーラーパーク管理組合」を設立した。常勤1人と18人の非常勤からなる。テイクエナジーは、土地の賃料として年間500万円を同組合に払うとともに、売電収入の約5%(約500万円)を同組合に還元している。それは単にお金を寄付するのではなく、5%分の売電収入を原資とした「マーケティング包括協定」を管理組合と結んだ。

 「マーケティング」とは、水増集落の産業を活性化することで、最終的に雇用や定住を促進するのが狙いだ。具体的には、同集落で営まれている無農薬・無肥料の自然栽培型農業や在来作物を発掘してブランド化し、都市から観光客を呼び込んだり、体験型農業学習を受け入れたりして、交流人口を増やしていくことをイメージしている。

 東京・渋谷で「八天狗定食」を提供し、在来大豆をアピールし始めたのは、このマーケティング協定の成果の1つだ。定食の提供がスタートした2月15日には、水増集落とテイクエナジーの関係者、そして、くまモンが集まり、記者会見を開いた(図4)(図5)。

図4●「d47食堂」で記者会見を開催
図4●「d47食堂」で記者会見を開催
(出所:テイクエナジーコーポレーション)
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図5●水増集落の関係者も参加
図5●水増集落の関係者も参加
(出所:テイクエナジーコーポレーション)
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 「八天狗定食」は当初、1日30食を予定していたが、売り切れが続き、水増から食事を追加して送るなど、好評のうちに終わった。