「小さな農業」をブランド化

 水増ソーラーパークの事業用地は、かつて放牧に使われたことがあるが、30年以上、有効活用されなかった。共同所有する集落の財産のため、毎年、集落の住人が総出で野焼きし、灌木や雑草が生い茂るのを防いできた。だが、住民の高齢化が進むなか、その管理作業が大きな負担になってきた。固定価格買取制度(FIT)のスタートを機にメガソーラーによる売電事業も候補に挙がったが、建設費が工面できなかった。

 そこで、メガソーラーの候補地と売電事業希望者をマッチングする県の仕組みを活用し、発電事業に意欲のある民間企業を募った。そして、14件もの応募者のなかから、テイクエナジーに決め、太陽光発電事業を託した。

 他の応募者が、発電の事業性についての説明に終始するなか、テイクエナジーだけが、「売電事業で儲けることが最終的な目的ではなく、いかに地域を活性化させるかという視点を強調していた」と、水増ソーラーパーク管理組合の荒木和久組合長は振り返る。

 「規模の経済に対抗して、小さな農業を戦略的なマーケティングやブランディングによって産業化することで、若者が帰ってくる地域を作る、というテイクエナジーのプレゼンテーションは心に響いた」(荒木組合長)。

 「水増ソーラーパーク」を訪れると、急斜面に張り付けるようにパネルを設置し、その周辺にさまざまな農畜産施設がにぎやかに並んでいる。ヤギとニワトリの畜舎のほか、シイタケの栽培やブルーベリー畑、堆肥製造のエリアなど、太陽パネルを設置しなかった場所を有効利用している(図6)(図7)。

図6●メガソーラー隣接地でシイタケを栽培
図6●メガソーラー隣接地でシイタケを栽培
(出所:日経BP)
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図7●原木から伸びたシイタケ
図7●原木から伸びたシイタケ
(出所:日経BP)
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