群馬県北部に位置する沼田市利根町は、平成の大合併により沼田市に編入された旧利根村だった地域。赤城山や皇海山(すかいさん)など著名な名山に囲まれ、80%以上を山林が占める。高冷地野菜を主体とした農業と、林業が盛んだが、近年は人口減少が急速に進んでいる。

 利根町の中でも追貝集落に属する砥山地区は、戦後に開拓され、かつては10軒の農家が酪農を営み、その後、野菜、リンゴ栽培が盛んになった。だが、後継者不足と高齢化により、現在は6軒まで減少し、耕作放棄地が増加している。それに従い、野生鳥獣による農業への被害も増えるなど、悪循環に陥っているという。

 こうしたなか、沼田市利根町に本社を持つ椎坂建設は、同地区で借地した4haもの耕作放棄地で、ソバ栽培と太陽光発電の「ソーラーシェアリング」に取り組んでいる。ソーラーシェアリングが軌道に乗って農家の所得を増やせれば、農地の再生と後継者の育成に貢献できる。同社は法面と土木工事で優れた技術を持っており、太陽光発電の建設に生かしつつ、農業分野に参入することで、経営を多角化できる利点もある。

 2015年7月31日、出力約1.1MWの「沼田市利根町太陽光発電所」が発電を始め、ほぼ同時期に太陽光パネルの下にソバの種を播いた(図1)。

図1●2015年7月末に太陽光パネルの下にソバの種を播いた(出所:椎坂建設)
図1●2015年7月末に太陽光パネルの下にソバの種を播いた(出所:椎坂建設)
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