韓国のダムの実績を評価

 東和アークスが最初に開発した水上の太陽光発電所は、埼玉県比企郡吉見町にある和名沼の出力401kWの「東和アークス吉見水上発電所」だった(図2)。

図2●埼玉県吉見町にある出力401kWの水上太陽光発電所
図2●埼玉県吉見町にある出力401kWの水上太陽光発電所
最初に開発した案件(出所:東和アークス)
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 埼玉県はため池が多い地域で、所有している地方自治体や、管理している地域の関連団体にとって、長期にわたる維持管理は共通した悩みとなっている。

 そこで、東和アークスでは、和名沼の水上太陽光発電所の開発に際して、所有者の吉見町、維持管理を担当している水利組合に対して、水面を借りるだけでなく、年間2回の草刈りといった提体の維持業務を引き受けることなどを提案した。こうした提案が受け入れられ、吉見町から水面を借りている。

 フロートは、韓国Scotra社との共同開発品を採用した。堅牢性、安全性が魅力だったとしている。

 韓国水資源公社(k-water社)が、韓国の慶尚南道にある大型ダム湖「ハプチョンダム」に浮かべた水上太陽光発電所で採用したフロートだった。

 同湖の設置環境は厳しいものだった。水深は90m、水位差は20m以上、最大風速は45mという、池に比べて水深や水位差が大きいだけでなく、上流からの流入物の衝突を想定しておく必要もあった。Scotra社のフロートは、こうした厳しい環境に耐えている実績がある。

 韓国のダムでは、冷蔵庫といった大型の機器まで、上流の川から流れ込んでくることがあり、水上太陽光発電所の設計思想は、日本とは大きく異なるという。

 Scotra社製のフロートは、樹脂製の部材が比較的少なく、地上に設置する架台に似た構造体を水面に浮かべる。

 レールのように細長い鋼材の支柱を縦横に組み、「浮き」のような役割を担う樹脂部材を取り付ける(図3)。地上設置型と同じように、設置角に傾けた鋼材に太陽光パネルを固定する。

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図3●レールのような支柱に樹脂部材を組む
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図3●レールのような支柱に樹脂部材を組む
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図3●レールのような支柱に樹脂部材を組む
2カ所目の所沢市の水上太陽光発電所における例(出所:東和アークス)

 鋼材には高耐食加工を施し、樹脂には軽量で紫外線や腐食に強い材料を採用している。いずれも耐候性・耐食性に優れた材料で、長期信頼性に優れる。

 和名沼の発電所では、20個の樹脂部材で、36枚の太陽光パネルを支えるユニットを組み、このユニットを一つの単位として池に浮かべた。ユニット単位で強固な構造となり、これを連結していくことで、池の上に島のように浮かんだフロート全体が、安定的な構造を形成する。

 水上でも安定性が高く、地上と同じように施工や保守の作業が可能と評価している。

 樹脂部材同士を隙間なく連結することで、通路やケーブルの固定材なども構成できる。水上を曳航するボートのような構造も、この樹脂部材を連結して作る。

 組み立て作業場も、フロート用ではないものの、他の樹脂部材などで作成する。

 水上太陽光発電所の施工では、一定の規模の平地が池に隣接していることが望ましい。平地を組み立て作業や保管に使い、施工効率を向上できる。

 池の隣に広い平地がない場合、資材の保管や組立作業で苦労する場合があるが、東和アークスの場合、樹脂部材を連結して水面に安定した平地を構築できるため、こうした苦労も避けられる。

 和名沼の水上太陽光発電所の後、所沢市による「フロート式太陽光発電設備設置運営事業」に採用された(図4)。プロポーザル方式の入札で、東和アークスのほか、三井住友ファイナンス&リース、八洲電業社、二上の4社による共同事業体の提案が採用された。

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図4●所沢市の松が丘調整池の水面を活用
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図4●所沢市の松が丘調整池の水面を活用
出力385kWの水上太陽光発電所(出所:東和アークス)

 所沢市松が丘にある松が丘調整池の水面を活用するもので、太陽光発電システムの出力は385kWである。

 この案件では、同じようにScotra社と共同開発したフロートを採用した。先行した和名沼の場合に比べて、施工性が大幅に向上したという。例えば、パネルの配置を変えたことで、レールのような鋼材の長さが12mから6.5mに短くなり、ネジの本数も約60%減ったという。