製品設計とエンジニアリング力の双方で

 同社のフロートは樹脂による構造の組み合わせによって構成し、「浮き」のような役割を担う浮力体の樹脂部材1つごとに、太陽光パネルを1枚ずつ固定して、水上に浮かべる(図2)。この「1フロート・1パネル」方式は、実用化で先行していたフランスのシエル・テール・インターナショナル製と共通する。

図2●開発したフロートの概要
図2●開発したフロートの概要
日本の池の特性を考慮した(出所:三井住友建設)
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 日本のため池は、水を抜いて水位が大きく変わることがある。農業用ため池では、田植え前に近隣の田んぼに水を張るために、ため池の水を使う。また、定期的に池を清掃したり、補修したりする場合もある。

 こうした日本特有のため池の運用に対応しながら、太陽光パネルを安全に水面に浮かべるためには、「1フロート・1パネル」方式が適しているという。波が多少大きくなったり、万が一、水が大幅に少なくなってしまう場合でも、上下の動きに対して柔軟に追従できれば、太陽光パネルの損傷を比較的、抑えられるためである。

 より大きな単位で一体化する構成のフロートの場合、こうした状況で想定されるフロートの歪みが、上に乗せた太陽光パネルに悪影響を及ぼす恐れがあると考えた。

 樹脂部材そのものは強固にしながら、一つ一つの連結の工夫によって、水面の動きに対する追従性を高めている(図3)。

図3●樹脂部材は強く、連結部は柔軟に
図3●樹脂部材は強く、連結部は柔軟に
水面に対する追従性を高めた(出所:三井住友建設)
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 「浮き」のような役割を担う樹脂部材は、高密度ポリエチレンを使うことで、耐候性などを高めた。ただし、中空の部材のままでは、安全性に課題があると考えた。

 そこで、この部材の内部には、発泡材を充填した。これによって、外側から何かが衝突するといった場合でも、樹脂部材に穴が開いて中に水が流れ込み、浮力が落ちて水没するといったリスクを抑えた。中空の場合に比べ、3~5倍の剛性強度があるとしている。

 水面の動きに対する柔軟な追従性は、樹脂部材同士の連結に、配線などで使われる樹脂性の接続バンドを使うことで高めた。これに対して、ピンやボルトなどで固定すると、水面の動きに対する連結部の柔軟性が低くなる。

 このほか、フロートを構成するのは、太陽光パネルの上部を支える樹脂部材、パネルを支える樹脂部材の左右のスペースを連結し、かつ、移動時の足場となる樹脂部材、太陽光パネルを固定するための金具とボルトとなる。

 部品点数が少なく容易に組み立てられ、施工性が高いとしている。コストの削減や、点検箇所が少ないことによる保守性の高さにもつながっているとする。

 太陽光パネルの固定部は、幅150~170cm×奥行98~100cm×高さ3.5~5cmに対応しており、ほとんどのメーカーの太陽光パネルを固定できる。

 設置角は10度に設定している。発電量と耐風圧、コストのバランスが最適な角度としている。設置角をこれ以上に大きくすると、発電量は増える一方、耐風圧をさらに高める必要がある。これは、部材のコスト増加の要因にもなる。

 フロートの供給だけでなく、発電事業者が開発を計画している段階から、発電事業者やEPC(設計・調達・施工)サービス事業者をエンジニアリング面でサポートしている。

 もし、安全面で不十分な設計や施工が施された場合、どんなに製品としてのフロートが優れていても、事業期間中に水上に浮かべた発電設備の不具合につながる恐れもある。

 同社の場合、候補地となる池について、その概要や気象条件、周辺環境、水位の変化量などの情報を基に、まず同社のフロートが安全に使えるかどうか検討し、発電設備の配置計画、耐風圧、水上の占有面積、フロートの係留方法などを提案していく。

 いずれもフロートメーカー各社が提供するサービスの対象に含んでいる項目だが、安全を重視するために、吟味する内容の深さや、顧客に伝える際の推奨度合いが競合企業とは異なるのではないかと見ている。それが、「総合的なエンジニアリング力」として評価されていると強調している。