過積載せずに「台形」発電

 一般的な一軸式追尾システムは、太陽が東から上って西に沈むのを追いかけ、東から西に向きを変えるだけだが、エルムでは、もっと複雑に制御している。朝夕、地形線近くの太陽を追いかけ正対しようとすると、パネルの角度は50度以上になるが、そこまで立ててしまうと、後ろのアレイに陰ができてしまう。そこで、影のできやすい早朝と夕方には、むしろパネル角度を低くし、後ろのパネルに陰がかからないようにする。そして、10時頃に日が上ってくると45度まで傾ける。

 夕方は、逆に午後3時ごろに45度まで傾けた後は、後方パネルへの陰を防ぐため、パネルを寝かせていく。従って、パネル角度は最大で45度という。

 加えて、「曇天の場合、太陽を追尾して直達日射と正対するより、水平を維持して散乱日射を最大限に取り込んだ方が、かえって発電量が増える」(エルム)との分析結果から、日照センサーなどのデータを基に、直達日射が弱い場合は、太陽の追尾モードから、水平維持のモードに切り替わるという制御をしている。

 こうした日本の環境に合わせたきめ細かな制御とシンプルな構造が、一軸式追尾の投資効果を高めたと言える。

 売電単価の低下によって、連系出力の1.4倍を超えるパネル容量を設置する極端な「過積載」が広がっているが、追尾式架台ならば、そこまでパネルを増やさずに、過積載と同様に朝夕の発電量を増やして「台形」に近い発電量が得られる(図10)。しかも、発電ピーク時のロス(出力抑制)はなくなる。

 エルムの一軸式架台は、「日本に追尾式架台は向かない」という、これまでの業界の常識を打破する可能性を秘めている。

図10●「eMAX-SP <Lines>」の出力ロードの例
図10●「eMAX-SP <Lines>」の出力ロードの例
(出所:エルム)
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