蔡政権発足後、台湾で拡大する水上太陽光

 Sun Rise E&T社にとって、奈良県の案件が、商用ベースの水上太陽光発電事業における初めての採用となった。奈良県のプロジェクトを担当したEPC(設計・調達・施工)サービス事業者が日本管材センターに相談し、同社がSun Rise E&T社に打診したことを機に開発に着手した。

 実は、Sun Rise E&T社は2010年に台湾で水上太陽光発電の実証に携わった経験があった。その際、生け簀の技術や構造を転用してフロートを開発し、実用化できる目処を付けていた。日本管材センターからの要請にすぐに対応できたのは、こうした背景がある。

 日本で商用デビューを飾ったフロートは、その後、台湾で採用が拡大している。エビなどの養殖に使われなくなった池が多くなり、その有効活用として太陽光発電に注目が集まり始めたことに加え、政権交代による追い風が重なった。

 台湾では、2016年1月の総統選で、民進党の蔡英文主席が、国民党の朱立倫主席、親民党の宋楚瑜主席を破って当選し、政権交代を果たした。蔡総統は、以前から脱原発・再生可能エネルギーの導入加速を志向しており、当選後は電気事業法の改正などにより、太陽光発電を中心に再エネの割合を約20%まで高めることを目指している。

 中でも、水上設置型で年間500MW以上、累計で数GW規模の導入が想定されているという。新たな固定価格買取制度(FIT)では、水上型の買取価格を地上設置より高く設定することも検討されている。養殖に使われなくなった池のほか、農業用ため池などを有効活用する。

 台湾でのエビなどの養殖業は、インドやベトナムなど海外産との競争で劣勢になっているほか、元々、養殖池は薬品の多用などで連作障害が起きるため、一定期間以上は使えない事情などもある。

 台湾で初となる水上太陽光発電所は、2016年2月に、台湾南部の屏東県で稼働した。発電事業者は台湾LCY Chemical社で、フロートはSun Rise E&T社が供給した。

 屏東県は、LCY Chemical社、Sun Rise E&T社の両社が本拠を置くだけでなく、蔡総統の地元でもある。もともとエビの養殖が盛んだった地域で、養殖を終えた後の池の有効活用が地域全体の課題になっていた。これに、太陽光発電の大量導入という蔡総統の政策が追い風となり、当選1カ月後に稼働したこの案件以降、開発が相次いでいる。

 Sun Rise E&T社は現在、台湾において、合計出力約60MWの水上太陽光発電所の受注が確定しているほか、合計出力約40MWの商談も進んでいる。合わせて30カ所以上の水上太陽光発電所となり、発電所の規模は出力1M~13MWである。受注が確定しているのは、屏東県と桃園市の案件となっている。