「保険会社が得意な文脈」を持ち込む

講演する岩崎氏
講演する岩崎氏
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 ピッチセッションには、1次選考の通過企業(企業名は非公開)が登壇した。いずれもデジタルヘルス分野のソリューション、例えば遠隔診療や疾患予防・治療、服薬支援、妊活支援などにかかわるサービスやアプリを提供する企業である。

 続く基調講演には、保険会社向けのアクチュアリー業務などを手掛けるミリマン・ジャパンの岩崎宏介氏(同社 ヘルスケアプラクティス・データアナリティクスディレクター)が登壇。「アクチュアリーの視点からみるデジタルヘルスプロダクトの商品開発」と題して講演した。

 この中で岩崎氏が言及したのが、デジタルヘルスによる保険ビジネスの変革の可能性だ。「保険会社はこれまで、契約時と保険金支払い時にしか被保険者との接点を持てなかった。これからは契約期間中ずっと接点を持つ方向へ向かう。その間のニーズを満たすものとして、従来からのリスクヘッジに加えて新たな柱となるのが、健康増進。不健康な人を加入させない保険ではなく、被保険者を健康にすることで利益をあげるモデルだ。こうした取り組みはコストがかかるため以前はできなかったが、デジタルヘルスの活用によって格段に低いコストで実現できるようになってきた」(岩崎氏)。

メットライフ生命の前中氏
メットライフ生命の前中氏
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 イベントの最後には、メットライフ生命 執行役員 経営企画担当の前中康浩氏が挨拶に立った。プログラムに参加するベンチャー企業に対して同社は、サービスやビジネスモデルの構築に当たっての「“文脈の設定”に貢献できる」と同氏は話す。「消費者はお金に関わることは金融機関を頼るかもしれないが、“家族”や“健康”が関わる領域では保険会社との親和性が高まる。ベンチャー企業のエッジの効いたサービスに家族・健康という文脈を設定することで、サービスをスケールさせることができると考えている」(前中氏)。