法律と保険の議論は別もの

 ただしここで議論しているのは医政局長発の通知であり、保険に関する話はしていないことには注意が必要です。例えば、電子メールやSNSを使って行う遠隔診療は、保険診療としては実施できず、診療報酬の点数を取ることはできません。

 医政局長発の通知では、あくまでも医師法との関係上、医療行為としては行ってもいいと言っているだけです。自費診療としては許されるけれども、保険診療としては許されていないわけです。

 ここで、遠隔診療の診療報酬についてお話しておきます。まず、現状では遠隔診療では点数があまり取れません。管理料や指導料を取ることはできず、基本的には再診料の72点と処方箋料の68点を取れるだけです。一般名処方をしたら2点や3点付いたり、夜間に時間外で診察したらその分の点数が付いたりするプラスアルファはありますが、基本的にはこの72点と68点に限られます。

 1点10円ですので、遠隔診療では合計で1400円しか点数を取れないわけです。外来診療については、患者1人当たりの平均保険点数のデータが明らかにされています。それによると、平均単価は6500円くらいです。これが、遠隔診療をすると1400円くらいしか取れなくなるのです。保険点数が従来の4分の1とか3分の1しか取れなくなり、医師は同じ分だけ働いているのに稼ぎが少なくなってしまう。このことが、費用面から見た遠隔診療の課題です。

 もう一つ指摘させていただきたいのが、再診料に関する課題です。現状では遠隔診療は「再診料+処方箋料」で点数が取れるという形です。従って、初診から遠隔診療を行ったときには、初診の保険点数が取れないのです。

 法律の議論をしている範囲では、遠隔診療を初診で行っても良いか否かという論点は出てきません。一連の診療の中に対面診療をきちんと組み込むのであれば、初診から遠隔診療を行っても法律的には問題ないのです。

 ところが保険点数については、遠隔診療に対して認められているものは現状では再診料しかありません。ですから、初診で遠隔診療を行った場合には、取れる保険点数がない。点数が付いていない行為を保険診療として行うことはできませんので、保険診療の枠組みでは初診で遠隔診療はできないということになります。一方、自費診療ならば健康保険法や療養担当規則は関係ありませんので、初診から遠隔診療を行うことが可能です。