遠隔診療の解釈を事務連絡で明確化

 そうした中、日本におけるさまざまな規制をより適切なものにしていこうという趣旨で開催されている規制改革会議の健康・医療ワーキンググループで、遠隔診療が議論の俎上に乗りました。その結果、遠隔診療の取り扱いの明確化というものが、平成27年(2015年)6月30日に閣議決定されました。直接の対面診療と適切に組み合わせて行われるときは、医師の判断によって遠隔診療を行うことが可能である。そのような取り扱いを明確化すべきだという趣旨で、厚労省は平成27年度中に措置をしなさいということが決められたわけです。

 これを受けて、平成27年(2015年)8月10日に遠隔診療に関する事務連絡が出て、取り扱いが明確化されました。この通知に対しては「遠隔診療の解禁」という捉え方がされました。従来の通知では遠隔診療の対象としてへき地・離島や9種類ほどの疾患が挙げられていたのですが、これらはあくまでも例示であるということが明確化されたからです。

 遠隔診療は対面診療を補完すべきものであり、対面診療と適切に組み合わせて行われるときは遠隔診療でも良い。そのような趣旨が示されたのが、平成27年8月10日の事務連絡だったのです。

手段そのものが問題ではない

 この事務連絡後、何でもかんでも遠隔診療でやろうという姿勢の事業者が出てきました。SNSなどを使って、実質的に薬だけを売る遠隔診療を提供するような事業者です。

 さすがにそれは駄目だろうということで、2016年3月に新たな事務連絡が出ました。電子メール、SNS のテキストや写真のみによって得られる情報では、患者の心身の状態に対する有益な情報が得られない。そうした情報だけを判断材料に、遠隔診療だけですべての診療を完結させることは医師法20条に違反する。そういう趣旨の事務連絡でした。

 この後、2017年7月の通知につながっていくのですが、その前に再び規制改革会議の話がありました。この際には規制改革推進会議に名称が変わっているのですが、2017年5月23日にこの規制改革推進会議で第一次答申が出ました。まだ分かりにくい部分があるので、遠隔診療に関してもう一度通知を出してくださいという内容です。

 これを受けて2017年7月14日、遠隔診療の取り扱いをもう一段明確化する通知を厚労省が出しました。内容は大きく4つあります。第1と第2の点は、へき地や離島などの例以外でも遠隔診療をしてもいいということを再確認する内容です。

 第3の点は保険者が実施する禁煙外来に関するもので、このような禁煙外来は対面診療の必要性について柔軟に取り扱うことができる、結果的に対面診療が行われなくてもいいという内容です。

 第4の点は、2016年3月の事務連絡と関わりがあります。先ほどお話したように、この事務連絡では、電子メールやSNSでは患者の心身の状態に対する有益な情報が得られない場合、これらのツールで遠隔診療を行うことは医師法違反だという判断が示されました。これに対して今回の通知では、患者の心身の状態に関する有益な情報が得られるのであれば、遠隔診療を行っても医師法違反ではないとしました。

 つまり、手段そのものが問題なのではないということです。電子メールやSNSでも患者の状態が分かるのであれば、それらを使って遠隔診療を行うことは医師法に違反するものではない。そのような見解を示したのが、この通知になります。