ロタウイルスによる乳児死亡を防げ!

 報告会でプレゼンテーションを行ったのは、次の4つのアプリの開発や改良に参加したメンバーである。(1)ダンスを通じて心身の健康を支援する「Dance4Healing」、(2)認知症高齢者の資産管理を支援する「HAVEN」、(3)CPT(Current Procedural Terminology)と呼ばれる米国における医療事務を支援する「Medicoding」、(4)脱水症状に陥った乳児やその保護者を支援する「YourPacifier」。

「YourPacifier」について発表する大阪大学医学部の寺本将行氏
「YourPacifier」について発表する大阪大学医学部の寺本将行氏
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 このうち、参加約50チームの中からファイナリスト8チームに選ばれ、総合3位入賞を果たしたのがYourPacifierを開発したチーム。日本人学生6人から成り、報告会ではその一人、大阪大学医学部医学科6年(inochi 未来プロジェクト理事)の寺本将行氏が開発の経緯や内容を説明した。

 YourPacifierは“スマートおしゃぶり”をうたい、脱水症状を起こした乳児とその保護者をサポートするツールだ。開発のきっかけとなったのは、寺本氏が太平洋のパラオ共和国を訪れた際、ロタウイルスに感染して脱水症状となり、病院に運ばれる乳児を数多く見たこと。ロタウイルスに感染した乳児は嘔吐や下痢、脱水などの症状を起こし、重症化すると死亡することもある。ロタウイルス感染による死亡者は、世界で年間20万人以上にのぼるという。

 一方、先進国では乳児が嘔吐した場合、両親がパニックに陥り、あわてて病院に連れていくことが少なくない。嘔吐や脱水といった症状に対して家庭で緊急に対処できる方法がないため、病院に直行する以外にないというわけだ。

 YourPacifierでは、乳児の嘔吐や脱水症状にかかわるこうした2通りのニーズに対応するために、脱水症状に陥った乳児への水分補給と両親が取るべき行動を支援する。専用のおしゃぶりとスマートフォンアプリ、ダッシュボードの3点から成るツールで、キャッチフレーズは「Vomit and Put it.(吐いたら入れろ)」である。