国立国際医療研究センター病院 病院長の大西真氏
国立国際医療研究センター病院 病院長の大西真氏
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 「エボラ出血熱に感染している可能性がある患者が運ばれたとき、担当医は死を覚悟して対応した。彼にはまだ幼い子供が2人いるのに…」(国立国際医療研究センター病院 病院長の大西真氏)。

 画像診断装置や手術ロボットなど医療現場には先端技術を使った機器が続々と導入され、デジタル化の一途をたどっている。一方で、技術によるカバーができず、人手によるアナログな対応を強いられている現場もある。

国立国際医療研究センター病院 国際感染症センター 感染症対策専門職で国際診療部 コーディネーターの堀成美氏
国立国際医療研究センター病院 国際感染症センター 感染症対策専門職で国際診療部 コーディネーターの堀成美氏
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 感染症対策に携わる看護師である堀成美氏(国立国際医療研究センター病院 国際感染症センター 感染症対策専門職で国際診療部 コーディネーター)は、感染症対策の現場がアナログ対応であることを訴える。「これほど技術が進んでいるのに、感染症患者の対応を行うために、危険な環境に身を置かなくてはいけない。防護服を身に着けていても危険と隣り合わせであることには心理的ストレスを感じる」(同氏)。悩みの種は、心理的なものだけではない。前出の大西氏は、エボラ出血熱用の防護服は「暑くて30分も着ていられない」と指摘する。

 このように感染症対策の現場には課題が山積している。ここに、ものづくりやデジタル技術の活用の余地がある。例えば、ロボットの活用だ。生身の人間の代わりに患者の対応をする「疲れず、心が折れず、文句を言わない」(堀氏)存在が必要だからだ。堀氏は、現場の医療従事者たちと「人間の代わりに『Pepper』が感染症に罹患している可能性のある患者の対応をしてくれたら、と話をすることがある」という。

 感染症対策はあくまでも一例にすぎない。ものづくりやデジタル技術の活用により、医療現場の困りごとの解決を図りたいと考える現場は多くある。東京都医工連携HUB機構が2016年11月15日に開催した「第5回 記念クラスター研究会」では、国立国際医療研究センター病院の医師と看護師が登壇し、現場のニーズやものづくり企業との連携で見つかった課題について議論が交わされた。

 そこで話題となったのは、(1)リハビリテーション、(2)歯科、(3)新生児、(4)開発途上国、の領域である。以降で順に見ていこう。