新生児向けに求められる血糖測定と採尿バッグ

国立国際医療研究センター病院 小児科 第一新生児科医長の五石圭司氏
国立国際医療研究センター病院 小児科 第一新生児科医長の五石圭司氏
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 (3)の新生児は、生まれてから4週間までの赤ちゃんを指す。この新生児に向き合っているのが、国立国際医療研究センター病院 小児科 第一新生児科医長の五石圭司氏だ。新生児の患者は、国立国際医療研究センター病院全体の患者のうち1%を占めるにすぎないが、出生時の体重が2.5kgに満たない低出生体重児が年々増え、NICU(新生児集中治療室)に入院する新生児が増えているという。

 新生児診療の特徴は、「患者の意思表示が乏しく、暑いのか寒いのか、痛いのかどうかわからないことだ」と五石氏は話す。このほか、対象が小さいことや各体内臓器が未熟なこと、状態の変化が速いこと、医療行為が与える侵襲が大きいことも考慮する必要がある。

 五石氏は、新生児への侵襲低減の観点から、現場で求められているものとして血糖測定器と新生児用採尿バッグを挙げた。現在の血糖測定器は、かかとから採血するものが一般的だが、「新生児にとっては侵襲が小さくない」と五石氏は指摘する。新生児採尿バッグについては、「現行品はシールを貼るのが難しく、お尻がかぶれてしまう」(五石氏)ことがあるという。

 五石氏は、2016年7月に国立国際医療研究センター病院と東京都医工連携HUB機構が合同開催した第1回合同クラスター研究会にも登壇した。上記2つのニーズについて発表したところ、代替できるような良いものがたくさんあることが分かったという。しかし、「現行品が1つ50~100円なので価格的競争が難しい」(五石氏)ため、新しいアイデアの実用化には至っていない。

 医工連携に取り組み、明らかとなった課題もあるという。例えば、採尿バッグを作る場合、テープを作る会社とバッグを作る会社は別だ。1つの製品を作るために、「各分野の専門家を結びつけることが難しい」(五石氏)。異業種から医療用機器開発に参入する企業からは、実用化に向けた安全性や認可について問われることもあるという。しかし、その部分に関して「医師もノウハウがあるわけではないため、答えることができない場面もあった」と五石氏は話す。医工連携においては、異業種からの参入支援やものづくり企業の連携のかじ取りを誰が行うのかという問題も残されていると指摘した。