“医療イノベーションが開く新市場”をテーマに、東京・日本橋で「アクセラレータープログラム イノベーションフォーラムin日本橋」(2015年11月15日)が開催された。日曜日のイベントながら100人ほどの会場は満員となり、その様子はヘルスケア×ITへの注目度の高さを物語っていた。

アクセラレータープログラム イノベーションフォーラムin日本橋の様子
アクセラレータープログラム イノベーションフォーラムin日本橋の様子
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 イベントでは、ITヘルスケア学会に所属する高崎健康福祉大学健康福祉学部医療情報学科 准教授の木村憲洋氏が登壇。同学会が取り組む医療データ活用のビジョンについて講演した。ITヘルスケア学会は、医療・福祉・健康分野における情報と情報利活用に関わる学術学会(今年の学会レポート記事集)

 木村氏によれば、現在ITヘルスケア学会では医療・健康データのデータベース構築を目指している。センシティブな類のそれらデータのセキュリティーをしっかりと担保しつつ、「公的なデータウェアハウスを作りたい」(木村氏)と語る。大まかに、研究用途のクローズドデータ、活動量計などウエアラブルデバイスから取得したオープンデータの管理・運用を想定する。

高崎健康福祉大学准教授の木村憲洋氏
高崎健康福祉大学准教授の木村憲洋氏
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 このデータウェアハウス構想には、膨張する一方の国民医療費問題、団塊世代が後期高齢者(75歳以上)に差し掛かる2025年問題、それに付随する首都圏の大幅な高齢者や独居老人の増加、いまだ明確な治療法が見つかっていない認知症問題などがある。

 これら数々の課題に対し、木村氏は「定性的・定量的なデータをどこかに集めて分析する必要がある。公的なデータストレージが構築され、データがオープン化されることで新しい知が生み出せるのではないか」と期待を込めた。

 中でも、今後重要視される予防に関するエビデンスは少ないと話す。疾病の重症化予防が避けられない状況の中、「レセプトデータだけでは回しきれない」(木村氏)のが現状だという。なぜなら診療報酬点数に直結するレセプトデータは保険点数を中心に決められた数値であり、実際の診療データとは乖離しているからである。