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センサーと人工知能で精神科疾患が診察できる!(page 5)

独自のアルゴリズムで治療効果予測や早期退院支援も

2016/11/16 04:00
大下 淳一=日経デジタルヘルス
出典: 日経メディカルOnline,2016年11月10日 , (記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

同じ症状が違う言葉で書かれてあるカルテの記載を理解

 MENTATとは、Watsonの自然言語処理能力を活用したクラウド型のシステムである。自然言語処理を使うと、コンピューターが自由記述で書かれた文章を解析して、その文章が意味するところがどういうことか、2つの文章が意味することが同じかどうかなどを判定できる(図2)。

 電子カルテに記載された経過記録や退院サマリ、看護メモなどから、「未治療期間」「初発時年齢」「拒薬傾向」といった、入院長期化や再発の予測に関わる因子を60個ほど文章から抽出。患者ごとにそれらの因子に関する情報を整理したデータベースをWatsonが自動で作成する。カルテの記載文には記載者の経験や好みといった個人差に基づくばらつきが出がちだが、Watsonはそのばらつきをも吸収した上でデータに変換できる強みがある。

図2 電子カルテの記述をWatsonで分析(藤田氏と大塚デジタルヘルスによる資料を基に本誌作成)
MENTATではWatsonの自然言語処理能力を使うことで、自由記述文における二重否定表現などを正しく認識できる。これを生かし、電子カルテの記述を構造化データに変換し、入院長期化や再発に影響を及ぼす因子を自動抽出する
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 過去の類似症例も簡単に検索でき、その症例がどのような経過をたどったか、どのような治療が有効だったかを確認することも可能だ。このほか、患者の病歴などの情報を表示したり、患者に処方された薬剤名や投与量を時系列で表示したりするなど、計12種類の機能を利用できる。

 同センターには、過去5年分の電子カルテデータとして、患者数8000人、入院数5600件、電子カルテ記述数にして2000万件が蓄積されている。この膨大なデータを、Watsonを使って整理し、診療に利用できる形のデータベースを構築した。このデータベースを活用すれば、これまでに得られた、患者の症状などと予後や治療効果との相関が一目瞭然となり、新しい患者の予後や治療に対する反応を予測することに活用できる。

 MEMTATは、こうして整理した電子カルテの情報から、それぞれの患者の治療の難易度を自動評価する仕組みを備える。例えば、措置入院や自殺未遂を繰り返しているといった因子に重み付けをし、医師と看護師、ケースワーカーのそれぞれにとっての治療の難易度を3段階で評価する。これによって「入院後すぐに、優先的に解決すべき項目を関係者が共有できるため、それを徐々につぶしていくことで早期退院につなげられる」(藤田氏)。

 既に同センターでは、統合失調症患者などの治療でMEMTATの利用を開始。治療難易度が最高ランクと評価された患者でも、予後や治療に対する反応を予測し、その予測に基づいて治療方針の決定や入院中からのデイケア体験、家族や訪問看護との調整を早期に進めることで、驚くほど早期に退院できたケースが生まれているという。

 ある50歳代の統合失調症患者のケースでは、過去の類似症例を参考にすると3カ月以内の退院率がゼロ、退院後も95%の確率で3カ月以内に再入院していることがMENTATで判明。この情報を医師と看護師、ケースワーカーが共有し、優先的に取り組むべき項目を明確にすることで、比較的早期の退院につなげられた。現在まで再入院せず、訪問看護などで対応できているという。

日経デジタルヘルス Special

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