これまでは研究や医薬品の開発に限って使われてきた、次世代シーケンサーによる網羅的遺伝子(ゲノム)解析。これをがんの日常診療に導入し、個別化医療を実践する「クリニカルシーケンス」の実現に向けて、国立がん研究センターが本格的に動き出す。臨床検査の国際基準に準拠した品質管理に対応できる遺伝子検査室を同センター 中央病院に新設。次世代シーケンサーと日本人向けの独自のがん検査キットを使った臨床研究を、2016年1月に始める(関連プレスリリース1)。同センターは2015年11月13日、東京都内で報道機関向け説明会を開催した。

国立がん研究センター 中央病院 院長の荒井保明氏
国立がん研究センター 中央病院 院長の荒井保明氏
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 「当初は限られた人だけが利用していた飛行機が、1940年代になって一般人が利用する旅客機になった。このイメージと重ねてもらうと分かりやすい」――。説明会に登壇した国立がん研究センター 中央病院 院長の荒井保明氏は、ゲノム解析に基づく個別化医療の現状を旅客機の歴史になぞらえてこう説明した。これまでは主に研究用途に利用されてきたゲノム解析を、日常診療へ。日本におけるその「記念すべき第1歩を我々が歩み出す」(同氏)とした。

 現在、日本の日常診療に使われている遺伝子検査は、特定の薬剤の効果や副作用に関連する特定遺伝子を調べる「コンパニオン診断」と呼ばれるもの。遺伝子を網羅的に調べるクリニカルシーケンスは米国などで一部始まっているが、日本では導入が進んでいない。今回の臨床研究では「平成30年(2018年)の診療報酬改定において、必要なデータをそろえて厚生労働省に提示することを目指す」(国立がん研究センター 企画戦略局長、同センター 中央病院 研究担当副院長の藤原康弘氏)。