病期によらず診断可能

 落谷氏に続いて登壇した国立がん研究センター研究所 ゲノム生物学研究分野の土屋直人氏は、エクソソームが内包するマイクロRNAを用いたがん診断の研究成果を、詳細に語った。

 がん診断マーカーとしてのマイクロRNAの特徴には「腫瘍が小さいうちから、がん細胞の特徴を反映する」(土屋氏)ことがあるという。例えば大腸がんでは、CA19-9やCEAのような現行の腫瘍マーカーでは、I期(ステージ1)のような早期段階では異常を検出しにくい。病期が進むほど検出率が高くなるのが、一般的なマーカーの性質だ。

 これに対しマイクロRNAは、ステージIのがんも十分に検出可能という。すなわち、腫瘍の大きさや病期によらず、どの段階でも有効なマーカーとなり得る。

 大腸がんや肺がん、すい臓がんといった異なる臓器にできたがんに対する、マイクロRNAの発現の比較も試みている。それぞれのがんのマイクロRNAの平均プロファイルには、明瞭な違いが現れるという。このように、マイクロRNAは「がんがどこにできたかも強く反映する」(土屋氏)。

 このほか、がんの術後にはマイクロRNAの値が下がることから、マイクロRNAが担がん(体内に腫瘍が存在する)状態を反映すること、検体の状態の影響を受けにくく測定再現性が高いこと、などの特徴があるという。ただし、エクソソーム以外にもマイクロRNAを分泌する様式が存在する可能性があることから、がん診断への応用に向けては、エクソソーム由来のマイクロRNAとそうでないものを区別して考える必要があるとした。