0.764%――。全国に約30万人存在する医師に占める「病理医」の比率だ。2300人強にすぎず、約1万8000人を擁する米国(全医師に占める比率は約3%)に大きく水を開けられている。日本の400床以上の病院のうち、病理医が不在の病院は実に247施設。病理医の「高齢化も進んでいる」(東京大学医学部附属病院 地域連携推進・遠隔病理診断センター長の佐々木毅氏)といい、病理医不足は今後ますます深刻になる。

デジタルパソロジーの動向などをテーマとした「第19回 日本遠隔医療学会学術大会」の「大会企画シンポジウムIV」の様子。右から順に東大病院の佐々木氏、東北大学病院の渡辺氏、厚生労働省の益池靖典氏、参議院議員の秋野公造氏
デジタルパソロジーの動向などをテーマとした「第19回 日本遠隔医療学会学術大会」の「大会企画シンポジウムIV」の様子。右から順に東大病院の佐々木氏、東北大学病院の渡辺氏、厚生労働省の益池靖典氏、参議院議員の秋野公造氏
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 こうした状況を克服する手段として期待を集めているのが「デジタルパソロジー(digital pathology)」、すなわちデジタル画像を用いた病理診断だ。病理組織標本(プレパラート)を高倍率で撮影し、標本全体をデジタル化した「バーチャルスライド(VS:virtual slide)」を使う。これにより、画像転送先からの遠隔での病理診断を可能にする。病理診断のデジタル化は「災害対策の点からも待ったなしだ」(佐々木氏)。

 既に、東北大学ではバーチャルスライドによる遠隔病理診断システムをVPN(仮想プライベートネットワーク)を用いて構築済み。東北大学病院 病理部 特命教授 がんセンターテレパソロジーセンター長の渡辺みか氏は、学会出張の際などに「iPadを使って病理診断を行っている」と話す。