東京駅から上越新幹線で約1時間30分。スキー場で賑わう越後湯沢駅の1つ先に浦佐駅がある。周辺はのどかな自然が広がる田園地帯であり、浦佐駅を構える南魚沼市は名産のコシヒカリや日本酒などで全国的に知られている。

 2014年9月、南魚沼市では全国に先駆けてCCRC推進を議会で表明した。以来、複数回にわたる勉強会を開催するなどして実現の具体化に向けて動き始めている。「日本版CCRC推進会議 第5回」(2015年10月6日)では、これまでの一連の取り組みを関係者が報告した。

 登壇したのは新潟県 産業労働観光部 参与であり、南魚沼版CCRC推進協議会 アドバイザーを務める河合雅樹氏。開口一番、河合氏は次のように切り出した。

南魚沼版CCRC推進協議会 アドバイザーの河合雅樹氏
南魚沼版CCRC推進協議会 アドバイザーの河合雅樹氏
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 「現状、南魚沼市のCCRCではただ1人の移住者もなく、1戸の住宅も完成していない。しかしテレビや新聞、雑誌などで注目されている。内部の会議では『売上が1米ドルもないITベンチャーが、株価が上がっているようなものだから気をつけよう』と言っている。バブルで終わるか、本当に大勢の人が来て活性化するか。そうした期待が、今まさに私たちに課せられている」。

 コミュニティーは冒頭に挙げた浦佐駅周辺を想定し、大きな軸として駅にほど近い「国際大学」との連携を考えている。国際大学はその名の通り、学生の約85%が海外からの留学生という日本初の大学院大学で1982年に開学。今まで世界100カ国以上の国々に卒業生を輩出するなどの実績を積んできた。現在も国際大学では地域社会と留学生の交流を積極的に展開しており、「その流れを拡大することでCCRCを実現していきたい。国際大学の強みを活かしたシニア、移住者のコミュニティーを考えている」(河合氏)と語った。加えて、近隣の北里大学保健衛生専門学院との連携も図る。

 これら大学連携を1つの核としつつ、南魚沼版CCRCでは新産業の創造と雇用の創出を最大の目標として掲げる。このため、地元企業、NPO、大学、自治体、金融、県内経済団体などが集い南魚沼版CCRC推進協議会を2015年7月に発足。CCRCの進むべき方向について議論を重ねている。

 また、南魚沼CCRCビジネス研究会も検討しており、今後、全国の企業に呼びかけて南魚沼市でシニアを対象としたさまざまなビジネスを構想していく。「例えばIoTとヘルスケア産業など、未来型の産業に対して全国の大企業に参画してもらいたい」(河合氏)といったアイデアもある。河合氏は、移住によって生まれる産業と雇用が、結果的に若年層の定着やUターン/Iターンなどにつながれば、との期待を込めた。