訪問看護師を救う

 最後に登壇したeWellは大阪に本社を置き、訪問看護システム/サービスの「iBow」を主力製品としている。代表の中野氏は「長期入院させず、自宅療養させる方向の地域包括ケアシステムには多くの課題がある」と切り出し、一例として医療と介護における情報連携の悪さを指摘した。

eWell の中野氏
eWell の中野氏
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 そこで両者のハブとなるのが訪問看護だという。訪問看護師は医療保険内での平均で月8回の訪問数を誇り、介護関係者の平均5.6回を上回る。医師に至っては月2回が平均のため、訪問看護師が最も多く地域の医療情報を有している。先述した同社のiBowは、これら訪問看護師の業務改善を図るツールとして浸透し始めている。

 「訪問看護師は、一日平均3カ所の訪問にとどまる。なぜか。最大のネックが変化を嫌う業界だということ。未だにアナログで紙にペンで記録するため、書くのに多くの時間を割いている。そこで訪問看護師が使えるように、業務をフルサポートしながらiBowで時間を短縮してもらっている」(中野氏)。

 タブレット端末やスマートフォンに対応したiBowの画面は、直感的な入力が可能。看護メモから訪問看護記録書IIを簡単に作成できたり、現場での状況を考慮して、音声入力や患者の写真添付もできたりする。これらの効果により、「1カ所の訪問あたり約40分の時間短縮を実現し、結果的に1日に5カ所まで訪問できるようになった」(中野氏)。また訪問看護ステーションは経営が厳しいところも多いため、業務効率改善とともに、収益構造の大幅な改善をサポートする仕組みも提供している。

 現在はiBow内にレセプト計算代行サービスも含み、レセプトでは保険請求システム5社とシステム連携を図る。「本来の競合相手と連携することでお互いの強みを出す」(中野氏)との考えのもと、訪問看護師にとって最も使いやすいサービスを提供していきたいと話す。将来的には、自社で保持する1万6000人にも及ぶ患者情報を地域包括ケアシステムに活用していく構えだ。そして中野氏は「情報を生かして社会の役に立てたらいい」と結んだ。