将来、医師の仕事を“奪う”ともいわれる人工知能(AI)。現時点で、その実力はいかほどか。慶応義塾大学 理工学部 生命情報学科 教授の榊原康文氏らのグループは2015年9月、その一端を具体的な数字で示して注目を集めた。AIに医師国家試験を解かせた結果だ(関連記事)。正答率は42.6%と、合格者の平均正答率66.6%には及ばなかった――。

 榊原氏は、第1回 日本医療情報学会「医用知能情報学研究会」・人工知能学会「医用人工知能研究会」合同研究会(2015年9月29日、東京大学本郷キャンパス)に登壇。「医師国家試験を自動解答するプログラムの開発」と題し、今回の挑戦の詳細を語った。

榊原氏の講演の様子
榊原氏の講演の様子
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 同氏らが究極の目標に掲げるのは、過去の症例と電子カルテの情報から病名を自動診断するAIの実現だ。その最初のステップとして今回、医師国家試験に解答するAIを開発した。医師国家試験の問題文が電子カルテの記述と類似しており、「電子カルテの良いモデルになる」(榊原氏)ことに着目した。