明らかになってきた認知症と糖尿病の相関や予防法――。弘前大学・青森県・弘前市が2016年9月23日に開催した「ヘルシーエイジング・イノベーションフォーラム」では、久山生活習慣病研究所 代表理事の清原裕氏が登壇、「『久山町研究』から推測すると日本の認知症患者は2035年に1000万人に到達する可能性もある」(同氏)と訴えた。

登壇する清原氏
登壇する清原氏
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 久山町研究は、九州大学大学院が福岡県久山町で1961年から継続している脳卒中、心血管疾患などの疫学調査。久山町は人口約8500人と小さな町だが、年齢・職業分布や住民の栄養摂取状況が日本の平均に近い状態とされる。

 久山町研究全体は40歳以上の住民が対象だが、認知症に関しては65歳以上の住民を対象に過去5回、7年間隔でスクリーニング調査を行い、追跡調査も実施している。7年ごとの検診の受診率は90%超で推移してきた。この結果、1985年調査では6.7%だった65歳以上人口における認知症の有病率が、2012年調査では17.9%まで上昇したことが分かった。この増え方を日本全体に当てはめると、2035年に認知症患者が1000万人に達する可能性があるのだという。

 病型別にみると、認知症の中で増加傾向がみられるのはアルツハイマー病で、1985年の高齢者の有病率1.4%から2012年に12.3%まで増えている。「アルツハイマー病は加齢に従って発症率が高くなるので、後期高齢者が増えていることも増加の一因ではあるが、一定の年齢層同士の比較でも以前より増えており、年齢だけが増加の原因とは考えられない。主因は他にあるはずで、それは糖尿病だと我々は考えている」(清原氏)。